食物アレルギーに係る表示義務食品等について
土曜日, 8月 11th, 2007KW:副作用・食物アレルギー・アレルギー・表示義務・表示奨励品目・即時型アレルギー・非即時型アレルギー・アナフィラキシーショック
Q:食物アレルギーとアレルギー原因食品の表示義務等について
A:2004年6月23日に行われた厚生労働省、農水省の合同有識者会議において、アレルギーの原因物質を含む加工食品の表示制度の見直しが行われた。
その結果、表示奨励品目として新たにバナナが追加された。また、「特定アレルギー食品を使っていません」とする表示も勧めることとなった。
更に、従来は原材料表示はすべて同じ色、大きさの文字と定めていたが、アレルギーの原因物質だけ文字の大きさや色を変えたり、欄外に別記するなどの方法も認める方針となった。改訂後の表示対象のアレルギー原因食品は以下の通り。
【表示義務】卵、乳、小麦、そば、落花生
【表示奨励】アワビ、イカ、イクラ、エビ、オレンジ、カニ、キウイフルーツ、牛肉、クルミ、サケ、サバ、大豆、鶏肉、豚肉、マツタケ、桃、山芋、リンゴ、ゼラチン、バナナ
米国アレルギー・臨床免疫学会は、1984年食物により惹起される生体にとって好ましくない反応を『adverse reaction to foods(食物に対する異常反応)』と定義し、免疫学的機序が関与した場合を『food allergy(食物アレルギー)又はfood hypersensitivity』、非免疫学的機序によるものを『food intolerance(食物不耐症)』と分類した。
食物不耐症には
- 食品添加物に対する過敏反応
- 仮性アレルゲンといわれる薬理作用もつ化学物質を含む食品に対する過敏症
- サルモネラ菌、赤痢菌、大腸菌が産生する毒素による食中毒
- 乳糖分解酵素欠損症のような代謝疾患
などが含まれている。
食物アレルギーの発症機序について、未だ十分に解明されていないとされている。食物アレルギーの発症は、食物を摂取して1時間以内に症状の出現する即時型と1時間以上経過してから症状が出現する非即時型に分けられる。
しかし、大部分の食物では、摂取後1時間以内に症状が発現する即時型であるといわれる。
蕎麦アレルギー等のアナフィラキシーや即時型の呼吸器症状、消化器症状は、吸収された食物抗原と消化管組織の肥満細胞並びに特異的IgE抗体との相互作用により起こる。食物抗原とそれに対するIgE抗体との反応により肥満細胞の脱顆粒が起こり、ヒスタミンなどの伝達物質が遊離し、アレルギー症状が発現する。
即時型の症状としては、食物摂取後、多くは15分以内に口内掻痒感、悪心、嘔吐、眼の掻痒感などの症状が発現する。皮膚症状としては湿疹、蕁麻疹、皮膚掻痒等が発現する。呼吸器系の症状としては鼻汁、鼻づまり、くしゃみなどの症状や咳、喘鳴、呼吸困難などの喘息症状を起こす。
食物アレルギーの症状は、免疫学的な要因だけでなく、非免疫学的な影響によっても悪化する。消化力が不十分であったり、組織や局所免疫が不全であると、未分化の高分子の蛋白質がそのまま循環系へ流入し、アレルギー症状が出現する。この形態の食物アレルギーは、乳幼児期に発症し、加齢により軽快する。
食物アレルギーの中で、最も重篤な症状はアナフィラキシーショックである。これは外来抗原に対する抗原抗体反応が引き金となって、急速に激症の全身的アレルギー症状を示す病態であり、極く僅かな食物の摂取で、意識不明、低血圧、激症のショック症状を発現する。蕎麦、ピーナツなどが原因で起こることがあり、過去に経験のある者では、摂取しないよう厳重に注意することが必要である。この形態の食物アレルギーは、加齢による耐性獲得はあまり期待できないとされている。
子供の食物アレルギーの症状の中で最も多いのは皮膚症状で、乳幼児では卵を食べた後などに皮膚発赤、皮膚掻痒、蕁麻疹などが発現する。特に1歳未満の幼児では卵による食物アレルギーの発現が多くみられる。
食物アレルギーの種 別 | 特徴 | 原因食品 |
---|---|---|
口腔アレルギー症候 群 | 直接接触した口唇、 口腔内に限局 | リンゴ、キウイフ ルーツ、サクランボ、桃、梅、トマト、スイカ、ジャガイモ、セロリ等 |
アナフィラキシー | 激症時に致死的 | 鶏卵、牛乳、ピーナ ツ、蕎麦、甲殻類、魚 |
食物依存性運動誘発性 アナフィラキシー |
食物摂取後数時間以内に運動 | 小麦、甲殻類、魚、 果物、セロリ等 |
仮性アレルゲン | 主な含有食品 |
---|---|
acetylcholine | クワイ、里芋、蕎 麦、タケノコ、トマト、茄子、ピーナツ、松茸、山芋 |
caffeine | 紅茶、コーラ、ココ ア、コーヒー、茶、チョコレート、ミルクチョコレート |
capsaicin | 胡椒、シシトウ、タ バスコ |
histamine | 赤ぶどう酒、魚類、 酵母、チーズ、トマト、茄子、ほうれん草 |
inolin | サンマ、塩鮭、冷蔵 たら |
serotonin
(5-hydroxytryptamine) |
アボガド、無花果、 カリフラワー、カンタロープ黒オリーブ、キーウイフルーツ、クルミ、グレープフルーツ、スモモ、トマト、茄子、ナツメヤシの実、パイナップル、バナナ、ハニーデュー、ヒッコリーナッツ、ブロッコリー、ほうれん草 |
phenyltyramine | 赤ぶどう酒、ゴーダ チーズ、スチルトンチーズ、チョコレート |
tyramine | アボガド、無花果、 カマンベールチーズ、醤油、スモモ、チェダーチーズ、トマト、茄子、納豆、発酵食品、バナナ、味噌 |
[065.ALL:2005.3.1.古泉秀夫]
- 向山徳子:食物アレルギーはなぜ起こる?;食生活,93(3):14-19(1999)
- http://www.food-allergy.jp/info/news.html,2004.8.20.
- 宇理須厚雄:まず食物アレルゲンを知ろう;食生活,93(3):20-26(1999)
- 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990