降圧薬のリバウンド現象について
金曜日, 8月 10th, 2007KW:副作用・リバウンド現象・rebound phenomenon・反跳現象・降圧薬・交感神経抑制薬・クロニジン・β-遮断薬
Q:降圧薬を自己判断等で中止した場合、血圧の悪化が見られるリバウンド現象があるといわれているが、発現機序について
A:リバウンド現象(rebound phenomenon)。
降圧薬のうち『交感神経抑制薬(中枢性α2アゴニスト)』は、突然の服薬中止により”跳ね返り現象”により、著明な高血圧を呈することがあるとされる。また長期投与されていた高用量のβ-遮断薬を中止するとリバウンド現象(狭心症の悪化、不整脈の誘発、血圧の上昇)を生じるとされている。
中等度-重度の高血圧症患者で薬物を変更する場合には、血圧の過度の変動を防止するために中止予定薬を徐々に減量しながら新薬を少しずつ増量していく。ときおり急性離脱症候群(acute withdrawal syndrome(AWS)が、通常、薬物中止後24-72時間以内に出現する。治療前の血圧値よりも大幅に上昇することがある。AWSの合併症として最も重大なものに、脳症、脳卒中、心筋梗塞、突然死がある。
降圧薬治療を中止する場合には、突然中断するのではなく、他の薬物が十分奏効するまでの間、数日-数週間をかけて徐々に減量する。もともと脳血管疾患や心疾患がある患者で降圧薬を中止する場合には、注意深く行う。一般にAWSを治療する場合には、それまで使用していた薬物を再投与するのが効果的である。但し、クロニジンによるAWSではβ-遮断薬は禁忌である。
[1]中枢性交感神経作動薬(特にクロニジン)とβ-遮断薬の場合に最も起こり易いが、利尿薬も含めて他の薬物についても報告例がある。clonidineは脳幹部のα2受容体に選択的に作用し、交感神経緊張を抑制し、末梢血管を拡張させることにより血圧下降を示すと考えられている。clonidineによるAWSでは、β -遮断薬により相対的にα作用が増強され、高血圧が悪化する。
一般名・商品名(会社名) | 注意事項 |
[214]clonidine hydrochloride カタプレス錠(ベーリンガー) |
本剤を投与している患者で急に投与を中止すると、まれに血圧の 上昇、神経過敏、頻脈、不安感、頭痛等のリバウンド現象が現れることがあるので、投与を中止しなければならない場合には、高血圧治療で一般に行われているように、投与量を徐々に減らすこと[添付文書,2005.4.] |
[214]guanabenz acetate ワイテンス錠(アルフレッサ) |
類似化合物(クロニジン)を投与している患者で急に投与を中止すると、まれに血圧の上昇、神経過敏、頻脈、不安感、頭痛等のリバウンド現象が現れることが知られているので、本剤の投与に当たっても、投与を中止しなけ ればならない場合には、高血圧治療で一般に行われているように、投与量を徐々に減らすこと[添付文書,2005.4]。 |
[214]guanfacine hydrochloride | -製造販売中止- |
[2]β-遮断薬を長期使用後に突然中止すると、急激な血圧上昇や心拍数上昇が見られることがあり、狭心症の患者では、突然死の原因となることもある。
これは受容体の長期遮断による受容体数の増加(up-regulation)による感受性の増加によるものである。中止時には漸減することが重要であり、患者には医師の指示なしに自己判断で中止しないよう指示することが必要である。
propranolol hydrochlorideは報告例あり。
一般名・商品名(会社名) | 注意事項 |
[212]carteolol hydrochloride ミケラン錠(大塚) |
類似化合物(塩酸プロプラノロール)使用中の狭心症の患者で、急に投与を中止したとき、症状が悪化したり、心筋梗塞を起こした症例が報告されているので、休薬を要する場合は徐々に減量し、観察を十分に行うこと。また、患者に医師の指示なしに服薬を中止しないよう注意すること。狭心症以外の適用、例えば不整脈で投与する場合でも、特に高齢者においては同様の注意をすること[添付文書,2005.4]。 |
[212]propranololhydrochloride インデラル錠・注(アストラゼネカ) |
本剤投与中の狭心症の患者で急に投与を中止したとき、症状が悪化したり、心筋梗塞を起こした症例が報告されているので、休薬を要する場合は徐々に減量し、観察を十分に行うこと。また、患者に医師の指示なしに服薬を中止しないよう注意すること。狭心症以外の適用、例えば不整脈で投与する場合でも特に高齢者においては同様の注意をすること[添付文書,2004.7.]。 |
[065.REB:2006.4.18.古泉秀夫]
- 小林光恵・他:特集 降圧薬の服薬指導-患者のQOL向上を目指して-β-遮断薬;薬局50(7): 1657-1662(1999)
- 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006
- インデラル錠IF,1999.6.
- 高久史麿・他監訳:ワシントンマニュアル 第9版;MEDSi,2002