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高尿酸血症の副作用が報告されていない高血圧治療薬

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:副作用・高尿酸血症・高血圧治療薬・尿酸代謝・高血圧・利尿薬

Q:薬を服用すると尿酸値が上昇するため、高血圧の薬で尿酸値上昇の副作用の報告されていない薬剤

A:高尿酸血症は、未治療の高血圧患者の約30%に見られ、尿酸代謝と高血圧の間に密接な関係があることが示唆される報告がされている。降圧薬の選択に対しては、少なくとも血清尿酸値を上昇させない降圧薬が望ましい。

サイアザイド系及びループ利尿薬は血清尿酸値を増加させる(カリウム保持性利尿薬は影響しない)ので、体液量依存性の重症高血圧や心不全を除いて使用しない。また大量のβ-遮断薬も血清尿酸値を上昇させる。

AII受容体拮抗薬のロサルタンは尿酸排泄作用があり、高尿酸血症合併高血圧患者で有用視されている。降圧薬投与下で血清尿酸値が高値を示すときは、尿酸排泄促進薬や尿酸合成阻害薬を投与するの報告がみられる。

更に『降圧薬が血清尿酸値に及ぼす影響』として、次表が報告されている。

薬剤名・分類名 添付文書記載 血清尿酸値影響
サイアザイド系利尿薬 benzylhydrochlorothiazide、 chlortalidone、hydrochlorothiazide、indapamide、mefruside、meticrane、
trichlormethiazide、tripamide、
上昇
ループ利尿剤 azosemido、 bumetanide、furosemide、piretanide、torasemide、
β-遮断薬 atenolol、 betaxolol hydrochloride、bisoprolol fumarate、carvedilol、celiprolol
hydrochloride、nipradilol、pindolol、propranolol hydrochloride、tilisolol hydrochloride
上昇
α1-遮断薬 下降
α・β-遮断薬 arotinolol hydrochloride、bevantolol hydrochloride、carvedilol、 上昇
ACE阻害薬 下降
α-メチルドパ 不変
Ca拮抗剤 下降
ロサルタン   下降
他のアンジオテンシン II(AII)受容体拮抗薬 不変

日本高血圧学会ガイドラインでは『高血圧に合併する高尿酸血症・痛風』に対してはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウム (Ca)拮抗薬、α1-遮断薬、腎での尿酸排泄促進作 用を有し、血清尿酸値が下がるロサルタンカリウム(平均0.7mg/dLの血清尿酸値降下が期待できる)を用いて血圧をコントロールするとしている。

血中尿酸値については、血液中に尿酸値が高い状態は無症状である限り病的な状態と判断すべきではないとする報告も見られるが、基礎疾患として高血圧のある場合、血中尿酸値の高値は必ずしも薬の副作用とは限らないと考えられるため、主治医の判断が最優先されるべきである。ただし、尿酸値の高値が薬剤の副作用であることが明確な場合、上表を参照して『降圧薬』を選択する。

[065.URE:2004.12.21.古泉秀夫]


  1. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン作成委員会・編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第1版;日本痛風・核酸代謝学会, 2002.8.1.
  2. 西岡久寿樹:痛風の疾患概念の整理と治療戦略の再構築;日本医事新報,No.4209:21-26(2004.12.25.)
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004