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コラーゲンの効用について

金曜日, 8月 10th, 2007

?KW:健康食品・コラーゲン・collagen・膠原質・硬蛋白質・ゼラチン・ゼリー

Q:健康食品として取り扱われているコラーゲンの効用について

A:コラーゲン(collagen)について、次の報告がされている。

collagen(膠原質)は硬蛋白質の一つで、ゼラチンやゼリーもその類縁物質である。細長い繊維状を呈し、動物組織の細胞間物質の主成分として体重 50kgのヒトの場合3kgがcollagenであるとされ、特に皮膚、骨、腱等に多く含まれており、皮膚組織の70%はcollagenが占めるとされている。その弾力に富む頑丈な構造によって、細胞や組織が本来の機能を発揮できるよう相互にしっかりと繋ぎ止めている。collagen の種々のタイプが明らかにされており、皮膚、骨、眼の水晶体、関節の軟骨にあるタイプ等それぞれ性質の異なる15種類程度が知られている。

collagenの類縁物質とされるゼラチン(gelatin)について、次の報告がされている。

本品は動物の骨、皮膚、人体又は腱を酸又はアルカリで処理して得た粗コラーゲンを水で加熱抽出して製したものであるとされている。collagenは硬蛋白質の1種で、弱酸、弱塩基又は蛋白分解酵素の作用を比較的受けにくく、水にも溶けない。骨collagenはオッセイン(ossein)ともいう。 collagenは水と熱すると、非可逆的に水に溶け、また、蛋白分解酵素の作用を受けるとgelatinに変わる。この変化はcollagenのペプチド結合が一部加水分解されるためであると考えられるが、またペプチド鎖間のイオン結合や水素結合が開裂した結果とも考えられる。gelatinのアミノ酸組成は、collagenのものと似ているが、グリシン、プロリン、オキシプロリンを含み、シスチン、システインに乏しく、トリプトファンを含まず、栄養価は乏しい。膠は他の蛋白質も混在している不純なgelatinである。

gelatinは動物の骨、皮膚、人体、腱などを処理して得たにかわを精製したものである。原料としては牛、豚、鯨などの皮、骨、腱などを用いるが、牛の皮と骨が最も多く用いられる。

gelatinは医薬品の製剤原料として用途の広いもので、強固な弾力性のあるカプセルの製剤原料として最も多く用いられる。可逆性ゼラチン基礎剤として皮膚薬に、また錠剤、坐剤の基礎剤としてまた乳化剤として用いられる。注射剤に混合すると吸収を遅延させるので、作用時間を延長させる。また本薬の注射薬を静注すると血液の凝固性を高めるので、内出血の治療に用いられる。

本薬はトリプトファンのような必須アミノ酸を含有していないので完全な蛋白質ではないが、消化されやすく、糖質及び脂質を含有していないので食用として利用される。また、gelatinに免疫機能を賦活する可能性が高いのではとする検討がされているの報告が見られる。

絶えず新陳代謝を繰り返している体内では、collagenの産生が不可欠であり、細胞中でアミノ酸から産生される。しかし、全細胞において生成されるわけではなく、主に繊維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋芽細胞等の特殊な細胞で生成される。細胞内で生成された collagenは細胞外へ分泌されて必要な場所に定着し、繊維同士が縦横に結合し立体構造を構築し、細胞の増殖を促進、細胞機能の活性化を促す作用を示す。以上のcollagenの作用機作から従来は化粧品の保湿剤として主に用いられていたが、動物実験の結果、経口投与により皮膚の保湿や新陳代謝の活性化が認められたことから、経口によるcollagenの利用が検討されるようになった。

多様な効果が期待されるcollagen飲料は、多くが牛皮、豚皮、牛軟骨等を原料とし、腸管で吸収されやすいよう酵素醗酵により低分子化が図られているとされる。用いる酵素の種類や分解法により様々な特性を持った多種類の製品が供給され、健康食品のみならず、一般食品への活用も進んでいるとされる。

collagenの確立した効用としては、現在の所『皮膚の保湿効果』ということであるが、collagenは動物性の原料を用いて製造されているため、ゼラチン等によるアレルギーの既往等を有する者では、collagen含有飲料の摂取は回避することが無難である。

[015.9COL:2000.7.4.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  2. 第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996