クマザサについて
金曜日, 8月 10th, 2007KW:漢方薬・クマザサ・薬効・薬理・イネ科植物・隈笹・クマザサ・ニッコウザサ・オオバザサ・ミヤコザサ
Q:クマザサの効用について
A:クマザサ(学名:sasa veitichii rehd.)は、イネ科植物である。九州や中国地方など、西日本に多く野生するが、秋から冬にかけて、葉の周辺が白変して美しいので、全国各地に栽培されるようになった。また栽培されていたものが、野生化して、各地で見られる。ササは非常に種類の多い植物であるが、中では最も目に触れるものの一つである。
葉の縁が白く隈取りされるので隈笹の名があるが、隈取りされるササには、他にニッコウザサ、オオバザサ、ミヤコザサなどがある。但し、ミヤコザサは珪酸が多く、薬用には不適であるとする報告も見られる。
ササの食品防腐作用は、多くのササの種類に含まれている安息香酸の殺菌、防腐作用であることが近年明らかにされた。この他、ササ類に共通した成分として葉緑素、ビタミンC、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2 、カルシウムが多く含まれているので、血液の弱アルカリ性化と、葉緑素の胃炎に対しての効果が期待される。その他、多糖体バンフォリンを含むとする資料もある。
適応として胃のもたれにササの葉の青汁を飲む。ササ類ならばどれでも薬効は同じなので、身近にあるササ類を利用すればよい。新鮮な葉の柔らかい部分を取って、ミキサーで青汁を作り飲む。新鮮な葉を1回20?30gの見当で使用する。あるいは夏期、新しい新葉、芯笹。青汁とともに乾燥した葉を用いるとする報告も見られる。芯笹はハトムギなどと混ぜて飲む。
クマザサ中の成分の一つである葉緑素について、次の報告がされている。葉緑素は、植物、藻類、細菌に存在するポルフィリン系の緑色色素で、テトラピロール環にマグネシウムが1原子結合しているマグネシウムの複合体である。クロロフィルは光合成における光エネルギーの化学エネルギーへの変換に重要な役割を果たす。共存する他の色素とともに種々の波長の光を吸収して励起を受け、その後に続く電子伝達系と協力してNADPを還元し、それと同時に光リン酸化を行う。
葉緑素の作用には、古くから造血作用、細胞賦活作用、組織刺激作用、脱臭作用など様々な作用を有することが知られている。
特に1973年に「水溶性の葉緑素が皮膚創傷面の細胞を賦活して肉芽組織の増殖と表皮形成を促し、優れた創面治癒促進作用を有すること」が認められ、主に概要として外科、皮膚科方面に応用されていた。
消化性潰瘍に使用した報告は1950年に論文発表された。それによると葉緑素を消化性潰瘍に使用した根拠を「消化性潰瘍の治療は、過剰な胃酸を除去したり、また酸分泌を抑制したり、食事量の制限や精神的不安を除く方法を試みたりしているが、いずれも間接的に自然治癒を助けるという方法でしかない。
それに対し葉緑素は皮膚の潰瘍に効果的で、肉芽組織の増殖を促進させるので、消化管中の潰瘍にも同じ効果が期待できるであろう」としている。
また、葉緑素には脱臭作用が知られているが、現在では、蛋白質との結合に代表される物理的・化学的吸着による脱臭効果や酵素阻害作用、抗菌作用などが挙げられている。この作用は消化性潰瘍でしばしば見られる口臭に対し、その除去作用として報告されている。また、マウスを用いた実験で、抗腫瘍作用の報告も見られる。
葉緑素中のマグネシウムを銅で置換して得られる銅クロロフィルナトリウム(安定な水溶性緑色色素)では抗ペプシン作用、胃粘膜のヘキソサミン増加作用も有しており、総合的に粘膜損傷を修復することが確認されているとする報告が見られる。
以上、クマザサの効用は、クマザサ中に含まれる葉緑素によるものが主要な効力であると考えられるが、隈笹の青汁を飲用する際、注意を要するのは、正確な含有量は報告されていないが、ビタミンKが含まれていることである。従って、warfarin服用中の患者では、飲用を原則的には避けるべきである。
なお、クマザサエキス関連医薬品としてはOTCで「サンクロン(太平生化学工業(株)」が市販されている。
- 組成:クマザサ処理抽出クロロフィリンナトリウム0.25%。
- [適]食欲不振、疲労回復、口臭・体臭除去、歯槽膿漏、口内炎。
- [用]通常成人1回約2?3mL、小児1/2。希釈して1日3回食間。 但し、本品は本質的にはクロロフィリンナトリウムの製剤であり、クマザサはその抽出のための原料として使用されている。
[015.9.SAS:2000.3.14.古泉秀夫]
- 水野瑞夫・他:明解 家庭の民間薬・漢方薬;新日本法規,1983
- 伊澤一男:薬草カラー大事典;主婦の友社,1998
- 福島県・編:福島県の薬用植物-知っていますか身近な薬草;福島県薬剤師会,1993
- 日本医薬品情報センター・編:一般薬日本医薬品集 第12版;薬業時報社,2000-01
- 梅田博史:シリーズ医食同源 食材、薬材-7.メサフィリン;日本薬剤師会雑誌,52(3):423-425(2000)