KW:健康食品・中毒・毒性・健康被害・肝静脈閉塞性疾患・コンフリー・confrey・ヒレハリソウ・ムラサキ科・boraginaceae・シンフィツム・symphytum・ピロリジンアルカロイド
Q:コンフリーによる健康被害について
A:“コンフリー(confrey)”は、ヒレハリソウ(Symphytum offcinale L.)の英名で、ムラサキ科(Boraginaceae)ヒレハリソウ属の多年草本である。高さ1mほどになり、全体に白い粗毛がある。葉は広披針形で、下方のものほど大きく、葉裏から茎に流下する翼がある。初夏に葉腋から巻散花序をだし、紫色の筒形花を付ける。ヨーロッパ原産、西アジアに分布。
- 学名:Symphytum spp.。別名:ニットボーン(knitbone)。
コンフリーの名称は、骨折を治すのに伝統的に使用されてきたことを証言している。コンフリーは「骨を硬くする」を意味する「コンファーマ“confirma”」がなまったもの。シンフィトム(Symphytum)は、ギリシャ語の「結合させること」に由来し、ニットボーン(骨を接合する)は直裁的な命名である。
- 主成分:アラントイン(4.7%未満)、粘液(約29%)、アスパラギン、トリテルペノイド、タンニン、フェノール酸(ロスマリン酸)、ピロリジン・アルカロイド(0.02-0.07%)。
- rosmarine acid(ロスマリン酸):confreyiには重要な抗炎症作用があるとされており、その効果はrosmarine acidや他のフェノール酸類が部分的に作用している。
- pyrrolidine alkaloid(ピロリジン・アルカロイド):ピロリジン骨格を持つアルカロイドの総称で、単離されたpyrrolidine alkaloidは、肝臓の強い強壮作用がある。植物全体では毒性があるかどうか明確ではないが、極く微量含まれ、乾燥した地上部には全く含まれないこともある。最も濃度が高いのは根で、安全性は確認されていないあるいは否定されているので、confreyの根は内服では用いるべきではない(地上部は安全だといわれている)。
confreyの主な作用:保護、収斂、抗炎症、傷や骨の治癒。
主な種
- Symphytum offcinale:通常のコンフリー
- Symphytum asperurn:プリックリーコンフリー
- Symphytum x uplandicum:ロシアンコンフリー
ただし、コンフリーを含む健康食品等では、これらの種類が区別されていない場合あるいは交雑種を使っている場合がある。若い芽や若い葉は茹でるなどして食べられることが知られている。
コンフリーの健康被害に関しては、厚生労働省から次の文書が発出されている。
平成16年6月14日
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課
監視安全課
シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の取扱いについて
本日、食品安全委員会かび毒・自然毒等専門調査会にて、シンフィツム(いわゆるコンフリー、以下「コンフリー」という。)及びこれを含む食品の取扱いについて、「コンフリー(Symphytum spp.)が原因と思われるヒトの肝静脈閉塞性疾患等の健康被害例が海外において多数報告されていること、また、日本においてコンフリーを使用した健康食品等がインターネットを使って販売されていることなどの情報から、日本においてコンフリーを摂食することによって健康被害が生じるおそれがあると考えられる」旨の意見の一致が見られたところです。
これを受け、厚生労働省は、コンフリーの製造・販売、摂取等に係る留意事項を次のとおり示したところですので、情報提供いたします。
なお、同留意事項については、地方自治体及び関係事業者・消費者団体に対し通知したことを申し添えます。
(1)コンフリーを製造・販売・輸入等する営業者に求める事項
- コンフリー及びこれを含む食品の製造・販売・輸入等の自粛
- 回収等、営業者による自主的な措置の実施
*食品安全委員会の食品健康影響評価の結果が正式に示された後、コンフリーに対し、食品衛生法に基づく法的な措置をとることとなる。
(2)一般消費者に対し求める事項
- 販売されたコンフリー及びこれを含む食品の摂取を控えること
- 自生し、又は自家栽培したコンフリーについても、その摂取を控えること
シンフィツム(いわゆるコンフリー)に関するQ&A
Q1.シンフィツム(いわゆるコンフリー)とはどのようなものですか。
A1.別名ヒレハリソウともいう。ムラサキ科ヒレハリソウ属の多年草本で、主な種として、通常のコンフリー(Symphytum offcinale)、プリックリーコンフリー(Symphytum asperum)、ロシアンコンフリー(Symphytum x uplandicum)などがあります。コーカサスを原産地とし、ヨーロッパから西アジアに分布しています。草丈は60~90cmで、直立し、全身に粗毛が生え、葉は卵形~長卵形。初夏から夏にかけて花茎を伸ばして釣り鐘状の白?薄色の花を咲かせます。我が国には、明治時代に牧草として入り、一時長寿の効果があると宣伝され、広く家庭菜園に普及しました。(参考:丸善食品総合辞典(丸善株式会社) 他)
Q2.コンフリーを摂食することでどのような健康被害が知られていますか。
A2.諸外国では、コンフリーを摂取した場合の主要な健康被害として、肝障害が報告されています。主な肝障害は肝静脈閉塞性疾患で、主に肝臓の細静脈の非血栓性閉塞による肝硬変又は肝不全です。主症状は、急性又は慢性の門脈圧亢進、肝肥大、腹痛です。
Q3.コンフリーを含む製品を摂取していますが、どうすればいいですか。
A3.摂取を中止してください。また、気になる症状がある場合には、最寄りの医療機関で診察を受けてください。なお、日本国内でコンフリー又はこれを含む食品を摂取したことによる健康被害事例は、これまで報告されていません。
Q4.自生あるいは栽培しているコンフリーは有害ですか。
A4.自生あるいは栽培しているコンフリーであっても食用とすることで健康被害が生じるおそれがあると考えられるので、食用にはしないでください。なお、コンフリーが生育している環境中で生活していてヒトの健康に影響を及ぼすようなことはありません。
Q5.外国ではコンフリーの規制はありますか。
A5.米国では、コンフリーを含む栄養補助食品の自主回収等を勧告しています。カナダでは、コンフリーを含むNatural Health Productについては、当局の許可を得ている製品以外は販売禁止となっています。オーストラリアでは、コンフリーの一部の種類は意図的に食品に添加することを禁止する植物とされています。
Q6.コンフリーをゆでる、あげるなど加熱して摂食すれば、健康影響の恐れはなくなりますか。
A6.コンフリーを加熱することによって、その毒性が軽減されるというデータはありません。従って、加熱したものであってもコンフリー等を摂食することは避けてください。
平成16年6月18日
厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課
監視安全課
シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の取扱いについて(その2)
シンフィツム(いわゆるコンフリー、以下「コンフリー」という。)及びこれを含む食品に関しては、平成16年3月24日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価について食品安全委員会委員長の意見を求めていたところ、昨日、緊急を要するとの食品安全委員会での議論から、国民からの意見募集に先立ち、食品健康影響評価の通知(別添省略*)がありました。これを受けて、コンフリー及びこれを含む食品については、食品衛生法第6条第2号に該当するものとして販売等を禁止することとしたので、情報提供いたします。
なお、この内容については、地方自治体及び関係事業者・消費者団体に対し通知したことを申し添えます。
また、食品安全委員会では、別添通知の別添審議結果に対して広く国民からの意見・情報を募っています。
[*別添:府食第667号 平成16年6月17日 厚生労働大臣坂口 力宛 食品安全委員会寺田雅昭発]
■コンフリーに含まれる成分であるピロリジジンアルカロイド(Pyrrolizidine alkaloids)が、肝臓に有害作用を示すとされている。Pyrrolizidine alkaloidsには、多くの種類があるが、発癌性のものも知られている。プリックリーコンフリー(Symphytum asperurn)とロシアンコンフリー(Symphytum x uplandicum)は、コンフリー(Symphytum offcinale)よりPyrrolizidine alkaloidsを多く含み、また根には葉よりも高い濃度でPyrrolizidine alkaloidsが含まれるとする報告がされている。
諸外国における規制
■過去コンフリー食品によって起きた肝障害の事例では、最少で15mg/kg・body weight/dayのPyrrolizidine alkaloidsを摂取して肝障害を起こしている。海外にはPyrrolizidine alkaloidsを規制をしている国もある。
- 独逸:1992年ドイツ連邦健康局はハーブサプリメントからのPyrrolizidine alkaloids及びN-oxydo体の最大許容摂取量を0.1μg/日に定め、1年間に6週間までであれば、1日1μgまでの摂取は許容される。
- 米国:2001年7月FDAより関係業界に対し、ある種のコンフリーは人の健康に重大な悪影響(肝毒性、発癌性等)を及ぼすPyrrolizidine alkaloidsが含まれることから、コンフリー等を含む栄養補助食品の自主回収等を勧告している。
- 豪州・ニュージランド:2001年11月両国食品委員会は、コンフリー等に含まれるPyrrolizidine alkaloidsについて暫定的耐容摂取量(1μg/kgbw./day)を設定するとともに、コンフリーを食用に添加することや食用に供することを禁止している。
- カナダ:2003年12月保健省より消費者に対し、コンフリーあるいはこれを含む食品について、肝障害を惹起する恐れがあるので、エチミジン(Pyrrolizidine alkaloidsの一種)を含む可能性があることから、これらの食品を使用しないよう勧告している。
なお、Pyrrolizidine alkaloidsが含まれる他の食用植物としてコンフリー以外に、フキノトウ(Petasites japonicus)、ツワブキ(Farfugium japonicum)、モミジガサ(Cacalia delphiniifolia;若芽が“シドケ”)、フキタンポポ(Tussilago farfara)、ヘリオトロープ(Heliotropium spp.;和名“キダチルリソウ”) などがある。
個別に詳しい調査はされていないが、Pyrrolizidine alkaloidsが含まれることが知られているセネシオ属の植物で、若芽が山菜として利用されるものにハンゴンソウ(Senecio cannabifolius)、オカグルマ(Senecio integrifolius)、サワギク(Senecio nikoensis)、サワオグルマ(Senecio pierotii)、ノボロギク(Senecio vulgaris)などがあるとされている。
また南米原産でハーブ茶として利用されているマテ茶(Ilex paraguayensis)にもPyrrolizidine alkaloidsが含まれるとする報告がされている。
Pyrrolizidine alkaloids以外の有害アルカロイドを含む食用植物として、ワラビ(Pteridium aquilinum)などが知られている。ジャガイモも芽や芋が緑色になった部分には有毒アルカロイドのソラニンが含まれている。
これらの食品の多くは、長年の食経験があり、季節の山菜は食べられる季節が限定され、摂食する場合あく抜き等の調理をすることで、アルカロイドをある程度除去することが可能である。
また、胎児や幼児はコンフリーに含まれる有害成分への感受性が高いとされているため、摂食は回避する。妊娠中にコンフリー食品を利用し、胎児に毒性が現われたとする報告がされているので、特に妊産婦はコンフリーやコンフリー食品を摂食しないよう注意することが必要である。
[015.9.CON:2004.7.26.古泉秀夫・2004.12.26.改訂]
- 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
- 奥本裕昭・訳:イギリス植物民俗事典;八坂書房,2001
- 手塚千史・訳:大地の薬-ヨーロッパの薬用植物の神話、医療用途、料理レシピ-;あむすく,1996
- 厚生労働省ホームページ;http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0614-2.html,2004.7.1.
- 難波恒雄・監訳:世界薬用植物百科事典;誠文堂新光社,2000
- http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0614-2.html,2004.12.14.
- http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0618-2.html,2004.12.14.
- )http://www.co-op.or.jp/jccu/news/syoku/syo_040628_01.htm,2004.12.14.