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白湯の温度について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:語彙解釈・白湯・素湯・微温湯・温湯・熱湯・白湯の定義・白湯の温度・plain hot water

Q:患者に薬の服用について指示する際、水又は白湯で服用するよう伝えたところ白湯の温度は何度かの質問がされたが、白湯の温度は定められているか

A:通常、白湯又は素湯とは『味を付けたり、他のものを入れたりしない、ただの湯(plain hot water)』と理解されている。従って、白湯の温度が何度であるかの規定はされていない。

玉露の浸出法で用いられる温度は60℃、煎茶の浸出法では90℃、珈琲では熱湯とされている。

また、日本薬局方では、冷水=10℃以下、微温湯=30-40℃、温湯=60-70℃、熱湯=約100℃と規定されている。

薬を服用する場合、水又は白湯での服用を奨めるのは、混在する他の成分が薬の効果に影響することを避けるためであり、温度について期待するとすれば二次的なものであると考えられる。

しかし、薬を服用するのに舌を焼くような熱湯では、服用困難であり、当人の服用し易い温度ということになるが、何等かの指標が必要であるとするなら、微温湯での服用を推奨する。

なお、新人ママが公園での雑談で、赤ちゃんには、『シロユ』がいいんですってねと言って笑われたとする新聞の投稿を見たが、『白湯又は素湯』は“サユ”であって、“シロユ”ではないので念のため。

[615.8.PLA:2003.6.2.古泉秀夫]


  1. 三省堂国語辞典 第4版,1992
  2. 香川芳子・監修:五訂食品成分表;女子栄養大学出版部,2003
  3. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001

山王清心丸・万病感応丸の副作用

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:副作用・漢方薬・山王清心丸・ 牛黄清心丸・万病感応丸・神経症状

Q:当院内科受診中の患者で、中国からの輸入薬を買って内服したところ神経症状(感覚障害、脊髄性神経障害、錐体外路系神経症状(ハビスキー反射、スモン様症状、VB12欠乏様症状)等が発現したと訴えている。両剤の処方内容・製造会社等は不明であるが、この様な副作用の発現は報告されているか

A:山王清心丸(山王漢方研究所-北京同仁堂-日水製薬)は、中国からの輸入薬ではあるが、国内でOTC薬市販されている中国名「牛黄清心丸」である。

本品1丸中に

 

  • 牛黄248.7mg
  • 桂皮248.6mg
  • 当帰185.7mg
  • 防風185.7mg
  • 蜂蜜618.9mg
  • 甘草309.6mg
  • 芍薬309.6mg
  • 人参309.6mg
  • 羚羊角278.8mg
  • 阿膠216.6mg
  • 金箔2.5mg

を含有する滋養強壮剤であり、虚弱体質、肉体疲労、病中・病後、胃腸虚弱、食欲不振が適応とされている。本剤の添付文書に記載されている副作用として「発疹・発赤、悪心、嘔吐等の症状」が見られるのみであり、精神神経系に属する副作用の記載はされていない。

万病感応丸については、調査の範囲においてOTC薬として7製品が市販されているが、各薬剤の配合薬間に若干の差が見られている。

その内の一つである日本製薬の製品では、2錠中に

 

  • 麝香1mg
  • 牛黄7.5mg
  • サフラン40.0mg
  • 人参末200.0mg
  • 沈香末100.0mg
  • 牛胆40.0mg
  • 阿仙薬末115.0mg
  • d-ボルネオール40.0mg

を含有する製剤で、動悸・息切れ・気付け・消化不良・胃腸虚弱が適応である。尚、同製品の添付文書中に副作用に関する記載はされていない。

以上の資料の範囲から両剤の副作用として重篤な精神神経系の副作用が発現することは考え難い。

尚、牛黄清心丸については、次ぎの報道がされているので紹介する。

海外旅行の土産等で個人的に持ち帰った漢方薬の一種「牛黄清心丸」から、高濃度の水銀と砒素が見つかったという国民生活センターのテスト結果が公表された。今回テストした四種類の「牛黄清心丸」はいずれも中国製。香港・台湾などから土産として持込まれた。

テストの結果全ての薬剤から水銀12,000?32,000ppm、砒素3,000?12,000ppmが検出された。成人が1回服用すると 36?96mgの水銀と9?36mgの砒素を摂取することになる。我国では医師の処方なしに購入できる一般薬として水銀や砒素を含む薬剤の販売を認めていない。「牛黄清心丸」は中国では極一般的な漢方薬で、水銀も漢方薬の成分として普通に使用されているが、水銀の効用や安全性は確認されていない。

以上の報道は、個人的に中国等から入手した「牛黄清心丸」が対象であり、厚生省の輸入申請許可を得て導入している薬剤の場合、国内での使用が承認されていない成分を含有する薬剤の輸入許可はされないため、「山王清心丸」の製造は中国であるが、水銀、砒素等の配合はされていないはずであり、事実、添付文書中の組成欄にも水銀、砒素の記載はされていない。

次ぎに配合生薬のうち幾つかの生薬成分について、調査した結果は次の通りである。

牛黄→
牛科の黄牛あるいは水牛の胆嚢、胆管又は胆管中の結石。成分としてコール酸5.57?10.66%、デオキシコール酸1.96?2.29%、コレステロール0.56?1.66%等含有。
当帰→
セリ科植物。根は精油を含み、水溶部分からフェルラ酸、コハク酸、ニコチン酸、ウラシルが分離され、石油エーテル部分からブチリデン-フタリド、リグスチリド、アデニン、コリン及び13種のよく見られるアミノ酸が分離されている。この他、多量の庶糖、ビタミンB12(0.25?40μg/100g)、ビタミンA類似物質ビタミンA換算0.0675%)等を含有。
防風→
セリ科植物。精油、マンニトール、苦味配糖体等を含む。
芍薬→
キンポウゲ科の植物。根にペオニフロリンを含む。ベニバナヤマシャクヤクの根は精油、澱粉、粘液、蛋白質等を含む他、安息香酸を0.92%含有。
阿膠→
馬科、ロバの皮を毛を取除いてからよく煮て膠の塊にする。大部分はコラーゲン及び部分的水解物からなり、窒素を16.43?16.54%を含むが、基本的には蛋白質である。
沈香末→
ジンチョウゲ科の植物。沈香のアセトン抽出物(40?50%)を鹸化してから蒸留し、得た13%の精油は、ベンジルアセトン、p-メトキシベンジルアセトン等を含み、残留液にはヒドロ桂皮、p-メトキシ桂皮等が含まれている。
阿仙薬末→
まめ科植物、児茶の枝幹の煎汁を濃縮乾燥したもの。阿仙薬タンニン酸20?50%、l-及びdl-カテキン2?20%、l-及びdl-エピカテキン、フロバタニン及びフィセチン、クェルセチン、クェルセタゲチン等のフラボノールを含む。
d-ボルネオール→
竜脳樹から得られる精油でカンフル・アルコール。カンフルと同様に皮膚刺激の目的で使用される。

以上、配合成分についての調査結果等から判断して、正規のルートで購入された両剤を服用した結果として、精神神経系の副作用が発現する可能性を予測する情報は入手できなかった。

[510.FD18.065GOO][1991.8.6.・1999.4.2.一部修正.古泉秀夫]


  1. 日本医薬情報センター・編:一般用医薬品集1990?91;薬業時報社,1989
  2. 山王清心丸添付文書,1987
  3. 万病感応丸添付文書
  4. 生活情報AtoZ-水銀含む牛黄清心丸;読売新聞,1991.3.27.
  5. 中国製漢方薬に水銀と砒素;読売新聞,1991.3.15.
  6. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第一巻;小学館,1985
  7. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第二巻;小学館,1985
  8. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第四巻;小学館,1985
  9. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第三巻;小学館,1985
  10. 横山復次:世界の医薬品データバンク[1];広川書店,1987
  11. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.142,1991.8.12.より転載

坐薬併用時の挿入順位 改訂2版

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬物療法・坐薬・挿入順位・解熱剤・鎮吐剤・鎮痙剤・解熱鎮痛剤・胃腸機能調整薬

Q:解熱剤・吐気止め・痙攣止めの坐薬が処方された場合、その挿入順序はどうするのか

A:医師が処方せんを記載する場合、症状に対応じ、各薬剤を処方すると考えられる。しかし、処方せん上から、患者の症状の強弱を判断することは困難であり、一般論としての判断にならざるを得ないことを前もってお断りしておく。

なお、現在市販されている各薬効群に属する坐薬は、以下の通りである。

商品名
(会社名)
アンヒバ(北陸)
アルピニー
(エスエス)
メチロン(第一) ユニプロン
(昭和薬化-科研)
成分名 acetaminophen sulpyrine ibuprofen
含有量 50・100・200mg/個 100mg/個 500・100mg/個
適応症 小児科領域の解熱 他の解熱薬では効果が期待できないか、あるいは他の解熱薬の投与が不可能な場合の小児科領域における緊急解熱 小児科領域における急性上気道炎の解熱
用法 1日1回直腸内挿入 1日1回直腸内挿入 1日2回まで直腸内挿入
投与量 1歳未満:50mg
1-3歳未満:50-100mg
3-6歳未満:100mg
6-12歳:100-200mg
乳児:50-100mg
2-3歳:100mg
3歳以上:100-200mg
1回3-6mg/kg
投与上の注意 *1歳未満は未確立-慎重投与。
*過度の体温下降、虚脱、四肢冷却等→高熱を伴う乳幼児、消耗性疾患の患者→十分注意。
*投与期間:5日以内
*低体温によるショックを起こすことがあるので、少量から開始。
*ピリン系解熱鎮痛薬
*過度の体温上昇等やむを得ない場合にのみ投与する。投与時は少量(3mg/kg/回)から開始する。
商品名
(会社名)
ルピアール(エスエス)
ワコビタール(和光堂)
ダイアップ(和光堂)
成分名 phenobarbital sodium diazepam
含有量 25・50・100mg/個(L)
15・30・50・100mg
4・6・10mg/個
適応症 小児に対して経口投与が困難な場合:1.催眠、2.不安・緊張状態鎮静、3.熱性痙攣及び癲癇の痙攣発作の改善 小児における熱性痙攣及び癲癇の痙攣発作の改善
用法 直腸内挿入 1日1-2回直腸内挿入
投与量 1日4-7mg/kg 1回0.4-0.5mg/kg
投与上の注意 *新生児・未熟児:生後5日迄の新生児では、直腸よりの吸収が極めて微量のことがある。しかし吸収された時は半減期が極めて長い。t1/2:16.56時間(50mg直腸内投与:ウサギ) *1日1mg/kgを超えてはならない。
*熱性痙攣には発熱時の間歇投与として、37.5℃発熱を目安に、速やかに直腸内に挿入。t1/2:34.9時間(小児0.5mg/kg 1回直腸内)
商品名(会社名) ナウゼリン(協和醗酵)
成分名 domperidone
含有量 10・30・60mg/個
適応症 小児:以下の疾患及び薬剤投与時の消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満感、腹痛):周期性嘔吐、乳幼児下痢症、上気道感染症、抗悪性腫瘍剤投与時。
用法 直腸内
投与量 3歳未満:1回10mg、3歳以上:1回30mg 1日2-3回
投与上の注意 *過量投与回避。

次に解熱剤及び鎮痙剤の組み合わせから対象適応として『熱性痙攣』を参照する。

『熱性痙攣』は乳幼児期に38℃以上の発熱に伴ってみられる痙攣で、発熱初期の体温上昇時に起こりやすく、髄膜炎や脳炎などの中枢神経系感染症や急性脳症、代謝異常など明らかな原因疾患を認めないものと報告されている。

  1. 常態と異なり不機嫌で元気がない、食欲がない、鼻汁や咳嗽が出始めたなどの場合、体温を測定し、37.5℃-38.0℃あれば発熱の初期と考え対応する。
  2. 通常、頭部の冷却と解熱薬のみで経過を観察し、解熱薬は体温が37.5-38.0℃で早めに使用するよう勧めている。
  3. .家族が不安であれば、ダイアップ坐薬を渡しておき痙攣時に使用するよう説明する。今迄に痙攣が2回以上あれば、ダイアップ坐薬の予防的使用を考慮するが、熱性痙攣の閾値は1-3歳で低く4-5歳で上昇することを考慮して今後何回痙攣が起こるか予測しながら対応を考えていく

具体的処方例(2歳-13kgの場合):下記を適宜組み合わせて用いる。

[1]ダイアップ坐薬(4mg)—-1個
発熱(37.5℃以上)に気付いたとき1回目使用、発熱が持続する場合、2回目を8時間後に使用する。更に発熱が続いても、それ以上は使用しなくてよい。
[2]アンヒバ坐薬(100mg)
発熱時使用、間隔は5時間以上あける。

注意:acetaminophen坐薬は、diazepam坐薬と同時に使用するとdiazepamの血中濃度の上昇を遅らせることがあるので、acetaminophen坐薬は30分程度間隔を空けてから用いる。

  1. acetaminophen坐薬を投与する。承認適用は『1日1回』直腸内挿入であり、原則的には添付文書の記載が優先されるが、解熱されない場合、2回目の投与を行う。5時間以上の間隔を空ける。
  2. 過去の発熱時に痙攣発作が見られない場合、diazepam坐薬の投与は特に必要とされないようであるが、過去に痙攣の経験がある場合、diazepam 坐薬を挿入し、30分後にacetaminophen坐薬を挿入する。diazepam坐薬の2回目の投与が必要な場合8時間後に再度挿入するとされているが、使用回数は児の過去の病歴が重要な判断材料となるため、医師の指示に従う。
  3. domperidone坐薬の投与は、必ずしも嘔吐治療の目的ではなく、上記薬剤の副作用発現時の対症療法の可能性が予測されるので、嘔吐、下痢等の発現時に投与するものと考えられる。

acetaminophen坐薬及びdiazepam坐薬併用時の投与間隔について、次の報告がされている。

diazepam坐薬単独投与群では、投与後30分以内に全例でdiazepamの血中濃度が有効濃度下限域(150ng/mL)に達した。しかし併用群では、投与初期のdiazepam血中濃度の上昇が不良で、有効濃度下限に達するのに30分から2時間を要し、6例中3例では坐薬投与後30分以内には、血中濃度が有効濃度下限に達しなかった。

その理由として直腸内腔液に溶解した脂溶性のdiazepamが、直腸粘膜から吸収される前に、直腸内腔に溶融している acetaminophen坐薬の油性基剤に一部取り込まれることが考えられる。解熱坐薬は、殆どが油性基剤を使用しており、同時投与には十分留意すべきである。

1996年に公表された「熱性けいれんの指導ガイドライン」[小児科臨床,49(2):207(1996)

]では、diazepam坐薬に解熱剤を併用する場合には、解熱薬を経口投与にするか、坐薬を用いる場合には、diazepam坐薬投与後少なくとも30分以上間隔を空けることが望ましいとされている。

[035.1.ACE:2000.5.26.古泉秀夫]

[2001.3.7.改訂]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000
  2. ルピアール坐薬添付文書,1997.10.改訂
  3. 多賀須幸男・他総監修:今日の治療指針;医学書院,2000
  4. Drug Informatiom Bank-アセトアミノフェン坐薬の併用がジアゼパム坐薬の直腸からの吸収に及ぼす影響-両剤併用時の薬物動態学的検討-(抄録);薬局,48(9):1570(1997)

降圧薬のリバウンド現象について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:副作用・リバウンド現象・rebound phenomenon・反跳現象・降圧薬・交感神経抑制薬・クロニジン・β-遮断薬

Q:降圧薬を自己判断等で中止した場合、血圧の悪化が見られるリバウンド現象があるといわれているが、発現機序について

A:リバウンド現象(rebound phenomenon)。

降圧薬のうち『交感神経抑制薬(中枢性α2アゴニスト)』は、突然の服薬中止により”跳ね返り現象”により、著明な高血圧を呈することがあるとされる。また長期投与されていた高用量のβ-遮断薬を中止するとリバウンド現象(狭心症の悪化、不整脈の誘発、血圧の上昇)を生じるとされている。

中等度-重度の高血圧症患者で薬物を変更する場合には、血圧の過度の変動を防止するために中止予定薬を徐々に減量しながら新薬を少しずつ増量していく。ときおり急性離脱症候群(acute withdrawal syndrome(AWS)が、通常、薬物中止後24-72時間以内に出現する。治療前の血圧値よりも大幅に上昇することがある。AWSの合併症として最も重大なものに、脳症、脳卒中、心筋梗塞、突然死がある。

降圧薬治療を中止する場合には、突然中断するのではなく、他の薬物が十分奏効するまでの間、数日-数週間をかけて徐々に減量する。もともと脳血管疾患や心疾患がある患者で降圧薬を中止する場合には、注意深く行う。一般にAWSを治療する場合には、それまで使用していた薬物を再投与するのが効果的である。但し、クロニジンによるAWSではβ-遮断薬は禁忌である。

[1]中枢性交感神経作動薬(特にクロニジン)とβ-遮断薬の場合に最も起こり易いが、利尿薬も含めて他の薬物についても報告例がある。clonidineは脳幹部のα2受容体に選択的に作用し、交感神経緊張を抑制し、末梢血管を拡張させることにより血圧下降を示すと考えられている。clonidineによるAWSでは、β -遮断薬により相対的にα作用が増強され、高血圧が悪化する。

一般名・商品名(会社名) 注意事項
[214]clonidine hydrochloride
カタプレス錠(ベーリンガー)
本剤を投与している患者で急に投与を中止すると、まれに血圧の
上昇、神経過敏、頻脈、不安感、頭痛等のリバウンド現象が現れることがあるので、投与を中止しなければならない場合には、高血圧治療で一般に行われているように、投与量を徐々に減らすこと[添付文書,2005.4.]
[214]guanabenz
acetate
ワイテンス錠(アルフレッサ)
類似化合物(クロニジン)を投与している患者で急に投与を中止すると、まれに血圧の上昇、神経過敏、頻脈、不安感、頭痛等のリバウンド現象が現れることが知られているので、本剤の投与に当たっても、投与を中止しなけ
ればならない場合には、高血圧治療で一般に行われているように、投与量を徐々に減らすこと[添付文書,2005.4]。
[214]guanfacine hydrochloride -製造販売中止-

[2]β-遮断薬を長期使用後に突然中止すると、急激な血圧上昇や心拍数上昇が見られることがあり、狭心症の患者では、突然死の原因となることもある。

これは受容体の長期遮断による受容体数の増加(up-regulation)による感受性の増加によるものである。中止時には漸減することが重要であり、患者には医師の指示なしに自己判断で中止しないよう指示することが必要である。

propranolol hydrochlorideは報告例あり。

一般名・商品名(会社名) 注意事項
[212]carteolol hydrochloride
ミケラン錠(大塚)
類似化合物(塩酸プロプラノロール)使用中の狭心症の患者で、急に投与を中止したとき、症状が悪化したり、心筋梗塞を起こした症例が報告されているので、休薬を要する場合は徐々に減量し、観察を十分に行うこと。また、患者に医師の指示なしに服薬を中止しないよう注意すること。狭心症以外の適用、例えば不整脈で投与する場合でも、特に高齢者においては同様の注意をすること[添付文書,2005.4]。
[212]propranololhydrochloride
インデラル錠・注(アストラゼネカ)
本剤投与中の狭心症の患者で急に投与を中止したとき、症状が悪化したり、心筋梗塞を起こした症例が報告されているので、休薬を要する場合は徐々に減量し、観察を十分に行うこと。また、患者に医師の指示なしに服薬を中止しないよう注意すること。狭心症以外の適用、例えば不整脈で投与する場合でも特に高齢者においては同様の注意をすること[添付文書,2004.7.]。

[065.REB:2006.4.18.古泉秀夫]


  1. 小林光恵・他:特集 降圧薬の服薬指導-患者のQOL向上を目指して-β-遮断薬;薬局50(7): 1657-1662(1999)
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006
  3. インデラル錠IF,1999.6.
  4. 高久史麿・他監訳:ワシントンマニュアル 第9版;MEDSi,2002

後発品の薬価について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:語彙解釈・後発品・薬価・薬価基準・薬価基準制度・generic name・generic・generic医薬品・ジェネリック規定・GEルール・低薬価品・2.5倍原則

Q:後発品の薬価はなぜ何種類もあるのか

A:保険医療で使用される医薬品の購入価格は、国が定める公定価格=『薬価基準』であり、昭和25年(1950)に薬価基準制度として定められた。

薬価基準制度は、使用薬剤の算定基準(価格表としての性格)と保険医療で使用可能な薬剤の範囲(品目表としての性格)を定めたものである。

医薬品の価格は、市場原理によって変動するのが常態である。市場実勢価格を適正に薬価基準に反映させるためには、薬価調査(市場価格調査)を行い、算出された取引価格を基に薬価基準を改定していく必要がある。

  • 平成10年(1998)4月の薬価改定までは、「加重平均値一定価格幅方式(リーズナブルゾーン方式)」とする、薬価調査で得られた銘柄別の全包装取引価格の加重平均に、現行薬価の一定割合(一定価格幅)を加えた値を新薬価とする(但し現行薬価を限度)方式であった。
  • 平成12年(2000)4月の改定においては、中央社会保険医療協議会などにおける薬価制度改革に係る論議を経て、それまでのR幅(一定割合)に代わる新しい方式を定める暫定措置として、薬剤流通安定のための調整幅を設けることとした(「市場実勢価格加重平均値調整幅方式」)。平成12年度では、改定前の薬価に調整幅2%を乗じた額とされたが、薬価改定前の薬価を超えることはない等の報告が見られる。
  • 平成14年(2002)4月の改定は、三方一両損のスローガンのもと、財政的対応の性格が強く、長期収載医薬品(後発品のある先発品)の価格引き下げに追い込まれたが、一方で画期的新薬の算定ルールの見直しが行われた。画期性加算は 40%→最高100%、有用性加算は(1)10%→最高30%、(2)3%→最高10%に再編。GEルール(2.5倍原則)は削除。
  • 平成16年(2004)4月の改定においては、長期収載医薬品(後発品のある先発品)の薬価引き下げルールの適用対象の拡大、新規後発品の薬価算定計数の引き下げ(0.8→0.7)、医療上の有用性が高い医薬品の評価方式の導入等が実施された。
  • 平成18年(2006)4月の改定では、市場実勢価格加重平均値調整幅方式による改定、いわゆる長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の薬価改定、再算定ルールによる改定、低薬価品に関する改定が行われている。

尚、ジェネリック(generic)医薬品は、新薬の長年にわたる臨床使用経験を踏まえて、有効性・安全性等が一定評価されたとして製造される。generic医薬品は、新薬に比べ実施する試験項目が少ないため、開発経費が少なく、低価格での提供が可能となっている。

generic医薬品(新規後発医薬品)の薬価収載は、現在では毎年1回7月に行われている。

  1. 初めて収載される場合には、新薬の薬価に0.7を乗じた額とされる。
  2. 既に他企業のgeneric医薬品が収載されている場合には最も低い薬価のものと同薬価に設定される。
  3. generic医薬品の合計した銘柄数が20を超える場合には、薬価が最も低い額のものを比較薬とし、0.9を乗じた額とされる。

等の算定方法が報告されている。

その他、薬価改定の際、既収載のgeneric医薬品も薬価改定ルールにより算定されるが、特例として、既収載品の組成、剤型区分及び規格が同一である全ての類似薬内の最も高い額に0.2を乗じた額を下回る算定額となる「低薬価品」については、低薬価品の市場実勢価格加重平均調整幅方式で算定した額とする。

既収載品の薬価改定ルールにより算定される額が、別途定める「最低薬価」を下回る場合には、当該「低薬価品目」については、「最低薬価」を改定後薬価とするの報告も見られる。

先発医薬品を基準として新規後発医薬品の薬価が決定され、更にgenericが市販されている場合、後発のgenericは「低薬価品」の特例ルール等により薬価が決定されているため、結果的にgeneric間に薬価の相違が見られる。

-注意事項-

注1.ジェネリック規定収載品目(一般名収載):1990年4月1日の薬価基準改正で、格差が著しい医薬品については、一般名収載方式が導入されることになった。一般名収載とは、同一成分・同一規格でありながら銘柄間の上下格差が 2.5倍を超える医薬品については、最低価格の銘柄を一般名(Generic Name)でまとめて収載する方式である。

その薬価は最高価格の2.5分の1の価格に止め、価格格差が2.5倍以内に収まれば銘柄別収載に戻される。つまり同一成分・同一規格の医薬品に、銘柄別に収載されている医薬品と一般名で収載されている医薬品があることになる。

一般名収載方式では、一般名の後に「含量」、「剤形」、「-GE」が付されている。

注2.GEルール:GE(一般名)収載品は、先発品の2.5分の1(40%)の薬価に補正されること。平成2年の薬価全面改定時に定められた(前出2.5倍の原則)。但し、GEルールは平成14年(2002)4月の改定で廃止。

注3.「低薬価品」:組成、剤形区分、及び規格が同一である類似薬のうち最も高い薬価の2割を下回るもの(低薬価品)については一般名により収載した。また、これまで一般名で収載されていたものであって、薬価調査における銘柄毎の市場実勢価格の把握により、低薬価品に該当しないことが確認できたアスピリン等159成分に係る1,140品目について、銘柄毎の収載とした。

[615.8.GEN:2006.4.17.古泉秀夫]


  1. 日本医薬品卸勤務薬剤師会・編:医薬品卸販売担当者研修教本I;社団法人日本医薬品卸業連合会,平成17年度改定版
  2. ジェネリック医薬品について;http://www.epma.gr.jp/something.htm,2006.4.10.
  3. 薬事ハンドブック;じほう,2002
  4. 薬事ハンドブック;じほう,2004
  5. 保険薬事典;じほう,平成12年4月版
  6. 使用薬剤の薬価(薬価基準)を定める件について[厚生労働省保険医療課長発出 各地方社会保険事務局長等宛],保医発第0306004号,平成18年3月6日

コウジ酸に関する行政文書について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:法律規則・行政指導・行政文書・コウジ酸・麹酸・発癌性・肝臓癌・安全対策

Q:コウジ酸に関する行政文書が出されたが、今回廃止するとされた文書について

A:今回、コウジ酸に関連して発出された文書は、次のものである。

薬食安発第1102006号

平成17年11月2日

社団法人日本薬剤師会会長 殿

厚生労働省医薬食品局安全対策課長

コウジ酸を含有する医薬部外品等に関する安全対策について

今般、別添のとおり各都道府県衛生主管部(局)長あてに通知しましたので、貴会会員に対して周知方お願いします。

  *        *

薬食安発第1102003号

平成17年11月2日

各都道府県衛生主管部(局)長 殿

厚生労働省医薬食品局安全対策課長

コウジ酸を含有する医薬部外品等に関する安全対策について

標記については、平成15年3月7日付医薬安発第0307006号安全対策課長通知(以下、「課長通知」という。)により、当面の措置を通知したところである。その後、実施された試験結果等に基づく「コウジ酸含有医薬部外品の安全性に関する検討会」における検討結果を踏まえ、本日開催された薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会において、コウジ酸を含有する医薬部外品等について、適正に使用される場合にあっては、安全性に特段の懸念はないものと考えられるとされたことから、課長通知を廃止するので貴管下関係業者への周知方お願いする。

今回廃止するとされた医薬安発第0307006号安全対策課長通知とは、以下の文書である。

医薬安発第0307006号

平成15年3月7日

各都道府県衛生部(局)長 殿

厚生労働省医薬局安全対策課長

コウジ酸を含有する医薬部外品等に関する安全対策について

平成15年3月7日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会において、コウジ酸を含有する医薬部外品等の安全対策について審議を行った結果は、別紙の通りである。ついては、速やかに、貴管下関係者に対して、下記の事項について指導方よろしくお願いする。

また、コウジ酸を含有する医薬部外品について、貴管下関係業者における品目名を把握するため、別紙様式により、FAXにて当課宛て報告をお願いする。なお、該当品目がない場合には、その旨報告されたい。

追加試験結果が出るまでの間、コウジ酸を含有する医薬部外品及び化粧品の製造・輸入を見合わせること。

なお、医薬安発第0307006号安全対策課長通知に係る詳細については、平成15年3月7日付で、厚生労働省医薬局安全対策課より以下の説明文書が公表されている。

コウジ酸を含有する医薬部外品等に関する安全対策について

I.本日、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会が開催され、コウジ酸を含有する医薬部外品等の安全性について、審議が行われた。審議の結果は以下のとおりである。

(基本的考え方)

(1)医薬部外品及び化粧品(以下「医薬部外品等」という。)は、疾病の治療等を目的として有効性と安全性を勘案して使用する医薬品とは異なるものであり、リスク・ベネフィットに基づく評価を行うことは適当ではない。

(2)現段階において得られている科学的知見からは、コウジ酸の肝臓における発がんメカニズムは明らかでないものの、遺伝毒性による可能性が否定できず、また、動物実験において発がん性が示唆されている。

(3)一方で、昭和63年の承認以降、コウジ酸を含有する医薬部外品等の使用による肝臓がん等の健康被害が発生した症例報告はなく、これまでに得られている科学的知見の多くからは、医薬部外品等としての用法・用量の範囲で使用する限りにおいて、発がん性および遺伝毒性が発現するという明らかな科学的根拠はなく、また、発がん性及び遺伝毒性の発現を否定するだけの科学的根拠もない、という状況である。

(4)このような状況において、コウジ酸を含有する医薬部外品等について、現時点では直ちに安全性に問題があるとは考えられないが、追加試験が実施され、コウジ酸と発がん性及び遺伝毒性との関係について明らかになるまでの間、新たな製造・輸入をしないことにより万が一のリスクを少なくする必要がある。

(当面講ずべき安全確保措置)

(1) コウジ酸を含有する医薬部外品等の製造・輸入業者は、以下の措置を講ずるこ。

  1. コウジ酸による肝臓での発がんメカニズム等を明らかにするため、追加試験を実施すること(別紙参照)。
  2. 追加試験の結果が出るまでの間、コウジ酸を含有する医薬部外品等の新たな製造・輸入を見合わせること。

(2) 厚生労働省は以下の措置を講ずること。

  1. 関係業界団体等に対して今回の措置について周知を図るとともに、消費者に対して関連する情報提供を徹底するため、インターネット等を通じて積極的な広報に努めること。
  2. 現在コウジ酸を含有する医薬部外品の承認を有する製造業者等が、コウジ酸と同様の効能又は効果を有するとして承認されている成分への切り替えを行う場合に限り、承認審査上、優先的な手続きを考慮すること。

II.薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会における審議の結果を受けて、製造業者等に対して、以下の事項を指示した。また、厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp)等を通じて消費者に対して関連する情報提供を徹底することとした。

  1. コウジ酸による肝臓での発がんメカニズム等を明らかにするため、追加試験を実施すること。
  2. 追加試験の結果が出るまでの間、コウジ酸を含有する医薬部外品等の製造・輸入を見合わせること。

別紙

追加試験一覧

  1. ラットを用いた肝臓での発がんイニシエーション試験(経口投与)
  2. 肝発がんプロモーション作用のメカニズム試験
  3. ラットを用いた混餌投与による発がん性試験
  4. ラットにおける代謝試験(代謝物の特定)
  5. 32Pポストラベル法による肝臓および皮膚におけるDNA付加体形成試験(光の影響の有無も含めた検討)(経皮及び経口投与)
  6. ヒトでの経皮吸収試験
  7. 光遺伝毒性試験
  8. げっ歯類を用いた皮膚腫瘍に関するイニシエーション・プロモーション試験(経皮投与)

今回発出された『薬食安発第1102003号 医薬食品局安全対策課長』通知により、危惧されたコウジ酸の危険性については、解除されたということである。

[615.1.KOJ:2005.12.7.古泉秀夫]

コロイド化技術について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:語彙解釈・コロイド化技術・超微粒子化技術・コロイド・ colloid・コロイドミル・colloid mill・乳剤

Q:コロイド化技術とはどの様な技術か。

A:コロイド化技術→超微粒子化技術。

コロイド(colloid):分散状態の一種。光学顕微鏡では直接見えない微粒子(直径1-100nm)が分散している状態の一種。また分散相(粒子)のみをいうこともある。分散媒及び分散相に固、液、気体があり、気-気以外の全ての組み合わせがあり得る。コロイド分散系、膠質ともいう。

コロイドミル(colloid mill):乳剤(コロイド溶液)を大規模に製造する時に用いる装置で、分散する物質を粗い粒子として溶媒に懸濁させ、その一部を他の部分と逆の方向に急速回転させ、その境界の衝突による摩擦粉砕によって粉末を更に細かく分散させることが出来る超微粉砕用機器の一種である。

コロイド化技術とは、『ある物質を体に吸収されやすい分子量に小さくする技術』とされており、エネルギー-細胞の生命力は、鉄、ヨウ素、マンガン、銅などの微量元素の存在が必要であり、これらの元素をより微細にして、生物細胞が利用できる大きさに変換する化学技術である。

自然状態ではこれらの物質はコロイド状で細胞に供給されるが、現在では実験室でコロイド状物質を生産することも可能になった。「最近ではコロイド物質の作用によって寿命が延びており、この分野の研究が進めば、平均寿命を延ばすことができるようになる」とする報告もされている。

[615.8.COL:2005.2.28. 古泉秀夫・2005.4.19.一部修正]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  2. 志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999

高尿酸血症の副作用が報告されていない高血圧治療薬

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:副作用・高尿酸血症・高血圧治療薬・尿酸代謝・高血圧・利尿薬

Q:薬を服用すると尿酸値が上昇するため、高血圧の薬で尿酸値上昇の副作用の報告されていない薬剤

A:高尿酸血症は、未治療の高血圧患者の約30%に見られ、尿酸代謝と高血圧の間に密接な関係があることが示唆される報告がされている。降圧薬の選択に対しては、少なくとも血清尿酸値を上昇させない降圧薬が望ましい。

サイアザイド系及びループ利尿薬は血清尿酸値を増加させる(カリウム保持性利尿薬は影響しない)ので、体液量依存性の重症高血圧や心不全を除いて使用しない。また大量のβ-遮断薬も血清尿酸値を上昇させる。

AII受容体拮抗薬のロサルタンは尿酸排泄作用があり、高尿酸血症合併高血圧患者で有用視されている。降圧薬投与下で血清尿酸値が高値を示すときは、尿酸排泄促進薬や尿酸合成阻害薬を投与するの報告がみられる。

更に『降圧薬が血清尿酸値に及ぼす影響』として、次表が報告されている。

薬剤名・分類名 添付文書記載 血清尿酸値影響
サイアザイド系利尿薬 benzylhydrochlorothiazide、 chlortalidone、hydrochlorothiazide、indapamide、mefruside、meticrane、
trichlormethiazide、tripamide、
上昇
ループ利尿剤 azosemido、 bumetanide、furosemide、piretanide、torasemide、
β-遮断薬 atenolol、 betaxolol hydrochloride、bisoprolol fumarate、carvedilol、celiprolol
hydrochloride、nipradilol、pindolol、propranolol hydrochloride、tilisolol hydrochloride
上昇
α1-遮断薬 下降
α・β-遮断薬 arotinolol hydrochloride、bevantolol hydrochloride、carvedilol、 上昇
ACE阻害薬 下降
α-メチルドパ 不変
Ca拮抗剤 下降
ロサルタン   下降
他のアンジオテンシン II(AII)受容体拮抗薬 不変

日本高血圧学会ガイドラインでは『高血圧に合併する高尿酸血症・痛風』に対してはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウム (Ca)拮抗薬、α1-遮断薬、腎での尿酸排泄促進作 用を有し、血清尿酸値が下がるロサルタンカリウム(平均0.7mg/dLの血清尿酸値降下が期待できる)を用いて血圧をコントロールするとしている。

血中尿酸値については、血液中に尿酸値が高い状態は無症状である限り病的な状態と判断すべきではないとする報告も見られるが、基礎疾患として高血圧のある場合、血中尿酸値の高値は必ずしも薬の副作用とは限らないと考えられるため、主治医の判断が最優先されるべきである。ただし、尿酸値の高値が薬剤の副作用であることが明確な場合、上表を参照して『降圧薬』を選択する。

[065.URE:2004.12.21.古泉秀夫]


  1. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン作成委員会・編:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第1版;日本痛風・核酸代謝学会, 2002.8.1.
  2. 西岡久寿樹:痛風の疾患概念の整理と治療戦略の再構築;日本医事新報,No.4209:21-26(2004.12.25.)
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004

抗生物質の過敏性試験について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:臨床薬理・抗生物質・過敏症試験・皮内反応テスト・プリックテスト・抗生物質製剤・サルファ剤・合成抗菌剤

Q:今回、抗生物質の皮内反応テストの廃止がされたが、それに伴いプリックテストの実施が推奨されたと聞くが、プリックテストに使用する注射針について

A:平成16年9月29日薬食安発第0929005号において『注射用抗生物質製剤等の使用上の注意の改訂について』とする文書が発出され、同時に『注射用抗生物質製剤、サルファ剤及び合成抗菌剤』・『坐薬用抗生物質製剤、サルファ剤及び合成抗菌剤』の使用上の注意の改訂指示(平成16年9月 29日)が発出された。 過敏症関連の改訂は、下記の通りである。

[注射]
抗生物質製剤
サルファ剤及び合成抗菌剤
[坐薬]抗生物質製剤及びサルファ剤
[重要な基本的注意]

  1. ショックがあらわれるおそれがあるので、十分な問診を行うこと。なお、事前に皮膚反応を実施することが望ましい。
  2. ショック発現時に救急処置のとれる準備をしておくこと。また、投与後患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。
[重要な基本的注意]

ショックがあらわれるおそれがあるので、十分な問診を行うこと。なお、事前に皮膚反応を実施することが望ましい。

[重要な基本的注意]の項のショックに関する記載を削除し本剤によるショック、アナフィラキシー様症状の発生を確実に予知できる方法はないので、次の措置を取ること。

  1. 事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。
  2. 投与に際しては、必ずショック等に対する救急措置のとれる準備をしておくこと。
  3. 投与開始から投与終了後まで、患者を安静な状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。
[重要な基本的注意]の項のショックに関する記載を削除し

本剤によるショック、アナフィラキシー様症状の発生を確実に予知できる方法はないので、事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。

なお、抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。

*アナフィラキシーの基本的な発症メカニズムは、マスト細胞(肥満細胞)あるいは好塩基球から放出された生物学的に活性な化学伝達物質の存在による。そのうちIgEを介する反応は『アナフィラキシー反応』IgEを介さない反応が『アナフィラキシー様反応』と呼ばれるが、両者を区別することは臨床的には不可能である。

上記が今回の改正内容であるが、行政上は『皮内試験』に代えて『プリックテスト』の実施を推奨しているわけではない。ただし、日本化学療法学会:抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン(2004)中に次の記載がされている。

なお、『特に、投与開始直後は注意深く観察すること』の投与開始直後について日本化学療法学会の提言では『静脈内投与開始20-30分間における患者の観察とショック発現に対する対処の備え』が必要とされているので、投与開始直後はこの期間を意味していると考えられる。また、アナフィラキシーショック発現時には可及的速やかに診断し、アドレナリン(epinephrine)を注射することが救命のためには必須である。蘇生などの緊急時には、『エピネフリンとして、通常成人1回0.25mg (0.25mL)を超えない量を生理食塩液などで希釈し、できるだけ緩徐に静注する。

なお、必要があれば、5-15分ごとに繰りかえす』(ボスミン注添付文書)。しかし、エピネフリンの高用量は有害であるとする見解が述べられているので、投与量については注意が必要である。

6.抗菌薬の皮膚反応試験

6-1.目的及び対象

薬剤アレルギーにおける皮膚試験の検討から見ると、病歴からアレルギーが疑われる患者においては、即時型薬剤アレルギーではプリックテストと皮内反応試験が薬剤に対するアレルギーの有無を局所の皮膚反応として調べる検査法として有用性が認められる。

しかしながらその有用性は、病歴からアレルギーが疑われる患者におけるものであり、アレルギー歴のない不特定多数において薬剤に対するアレルギーの有無を調べる検査法としての皮膚反応試験の有用性はないと判断される。

薬剤アレルギーが疑われる患者において、当該抗菌薬を投与せざるを得ない場合には、予め皮膚反応試験を行い、即時型アレルギーの存在を確認することに臨床的意義が認められる。

米国においては妊婦梅毒の患者にペニシリンアレルギーの既往がある場合などがあげられている[本ガイドライン項目3-2)参照]。

6-2.実施方法、判定方法

皮膚反応試験にはプリックテスト及び皮内反応試験がある。当該薬による薬剤アレルギーの存在が疑われる患者では、プリックテストを行うのがより安全である。皮膚疾患患者では偽陽性が増加する。

また、抗ヒスタミン及びステロイドなどの免疫抑制剤が投与されている場合には、偽陰性を考慮する必要がある。従来の皮内反応試験用の試薬は、実薬と内容が異なるので、プリックテスト及び皮内反応試験のいずれを行う場合も、実薬の一部を以下の要領で使用する。

6-2-1.プリックテスト

1)実施方法

当該注射薬の0.16%溶液を少量注射筒に採り、予めアルコール綿で清拭、乾燥させた被験者の前腕屈側皮膚上に1滴を滴下する。次に皮内針(23G 以上又は26Gの針)を皮膚に対して水平方向に持ち、滴下部分を出血しない程度に穿刺し、軽く皮膚を持ち上げた後針を抜き、1-2分経過後、滴下液をガーゼで軽く抑えて吸い取る。対照として、生理食塩水を用い同じ腕の注射液投与部位から十分離れた位置に同様の方法でプリックテストを実施する。

2)判定方法及び判定基準

施行15分後にテスト部位の皮膚状態を観察し、以下の基準に従って判定する。

陽性:膨疹径が4mm以上あるいは対照の2倍以上、又は発赤径が15mm以上。

陰性:膨疹、発赤があっても対照と差異のないものは陰性とする。

6-2-2.皮内反応試験

1)実施方法

[1]注射部位は前腕屈側*1とし、予め消毒用アルコールで清拭、乾かしておく。

[2]0.01mLまでの目盛りが付けられたツベルクリン注射器に皮内針を付け、当該注射薬の希釈液*2 を正確に0.02mL*3皮内へ注射する。正しく皮内に注射されると、直径4-5mmの膨疹ができる。

  • 注1:皮膚反応施行部位には通常前腕屈側を用いる。背部はより発赤がでやすいともいわれるので、小児では適している。しかし、万一全身症状が出現した場合の対応には、注射部位より中枢側で駆血が可能なため、前腕屈曲がよい。
  • 注2:皮内反応の抗原として用いられる薬剤の濃度として、ampicillin、 cephalothin、cephaloridin、 penicillin G、benzylpenicilloyl-HSA(BPO-HSA)は、いずれも300μg/mLが用いられる。それ以外の薬剤については、 carbapenem系は同量でよいが、キノロン系薬では局所でヒスタミン遊離を惹起する作用があるため、より薄い1-2μg/mLを用いる。
  • 注3:皮内反応の抗原注射量については、0.02mL、0.05mLなどがあるが、現在は0.02mLに統一されている。

2)判定方法

注射後15分後で行う。皮内反応が最大値に達する時間が15-20分であることから、通常15-20分又は15-30分で反応の大きさを測定する。

3)判定基準

判定 直径(縦軸・横軸の平均)mm
膨疹 発赤
陰性(?) 0-5 0-9
偽陽性(±) 6-8 10-19
陽性(+) 9-15 20-39
強陽性(2+) 16以上(偽足形成・掻痒伴う) 40以上

膨疹9mm以上、発赤20mm以上の何れか一方を満足すれば陽性とする。ただし、膨疹9mm近くでも発赤を伴わない場合は陰性。

4)検査結果と対応

皮膚反応試験が陰性であっても、ショック及びアナフィラキシー様症状が発現する可能性があるので、投与の際には注意を要する。皮膚反応試験が陽性の場合には、投与を行わない。  なお、プリックテストに用いる溶液の濃度について『0.16%』とする指示が見られる。この濃度については

抗生物質量 溶解液量
0.25g/10mL
0.5g/20mL
1.0g/20mL
1mLを秤取し全量15mLにする→25mg/15mL=1.66mg/mL1mLを秤取し全量30mLにする→50mg/30mL=1.66mg/mL
1mLを秤取し全量50mLにする→83mg/50mL=1.66mg/mL

[015.4.ANA:2004.11.9.古泉秀夫]


  1. 抗生物質・サルファ剤・合成抗菌剤(注射剤・坐薬)の使用上の注意の改訂について;https://diweb.e-mediceo.com,2004.11.8.
  2. パンスポリン静注用添付文書,2003.9.改訂
  3. パンスポリン静注用添付文書,2004.10.改訂
  4. エポセリン坐薬添付文書,2003.10.改訂
  5. エポセリン坐薬添付文書,2004.10.改訂
  6. 浜 六郎:抗生物質皮内テスト廃止は死亡事故を多発させる;正しい治療と薬の情報,19(10):105-110(2004)
  7. 今泉真知子:プリックテストって何?;THPA.,47(5)340(1998)
  8. 清澤研道:インターフェロン使用時のプリックテスト;日本医事新報,No.3551(1992)
  9. 浜 六郎:皮内テスト廃止後生じた劇症型アナフィラキシー-この死亡例から何を学ぶか-;正しい治療と薬の情報,19(11):113-116(2004)

コンフリーの摂食禁止について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:健康食品・中毒・毒性・健康被害・肝静脈閉塞性疾患・コンフリー・confrey・ヒレハリソウ・ムラサキ科・boraginaceae・シンフィツム・symphytum・ピロリジンアルカロイド

Q:コンフリーによる健康被害について

A:“コンフリー(confrey)”は、ヒレハリソウ(Symphytum offcinale L.)の英名で、ムラサキ科(Boraginaceae)ヒレハリソウ属の多年草本である。高さ1mほどになり、全体に白い粗毛がある。葉は広披針形で、下方のものほど大きく、葉裏から茎に流下する翼がある。初夏に葉腋から巻散花序をだし、紫色の筒形花を付ける。ヨーロッパ原産、西アジアに分布。

  • 学名:Symphytum spp.。別名:ニットボーン(knitbone)。

コンフリーの名称は、骨折を治すのに伝統的に使用されてきたことを証言している。コンフリーは「骨を硬くする」を意味する「コンファーマ“confirma”」がなまったもの。シンフィトム(Symphytum)は、ギリシャ語の「結合させること」に由来し、ニットボーン(骨を接合する)は直裁的な命名である。

  • 主成分:アラントイン(4.7%未満)、粘液(約29%)、アスパラギン、トリテルペノイド、タンニン、フェノール酸(ロスマリン酸)、ピロリジン・アルカロイド(0.02-0.07%)。
  • rosmarine acid(ロスマリン酸):confreyiには重要な抗炎症作用があるとされており、その効果はrosmarine acidや他のフェノール酸類が部分的に作用している。
  • pyrrolidine alkaloid(ピロリジン・アルカロイド):ピロリジン骨格を持つアルカロイドの総称で、単離されたpyrrolidine alkaloidは、肝臓の強い強壮作用がある。植物全体では毒性があるかどうか明確ではないが、極く微量含まれ、乾燥した地上部には全く含まれないこともある。最も濃度が高いのは根で、安全性は確認されていないあるいは否定されているので、confreyの根は内服では用いるべきではない(地上部は安全だといわれている)。

confreyの主な作用:保護、収斂、抗炎症、傷や骨の治癒。

主な種

  • Symphytum offcinale:通常のコンフリー
  • Symphytum asperurn:プリックリーコンフリー
  • Symphytum x uplandicum:ロシアンコンフリー

ただし、コンフリーを含む健康食品等では、これらの種類が区別されていない場合あるいは交雑種を使っている場合がある。若い芽や若い葉は茹でるなどして食べられることが知られている。

コンフリーの健康被害に関しては、厚生労働省から次の文書が発出されている。

平成16年6月14日

厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課

監視安全課

シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の取扱いについて

本日、食品安全委員会かび毒・自然毒等専門調査会にて、シンフィツム(いわゆるコンフリー、以下「コンフリー」という。)及びこれを含む食品の取扱いについて、「コンフリー(Symphytum spp.)が原因と思われるヒトの肝静脈閉塞性疾患等の健康被害例が海外において多数報告されていること、また、日本においてコンフリーを使用した健康食品等がインターネットを使って販売されていることなどの情報から、日本においてコンフリーを摂食することによって健康被害が生じるおそれがあると考えられる」旨の意見の一致が見られたところです。

これを受け、厚生労働省は、コンフリーの製造・販売、摂取等に係る留意事項を次のとおり示したところですので、情報提供いたします。

なお、同留意事項については、地方自治体及び関係事業者・消費者団体に対し通知したことを申し添えます。

(1)コンフリーを製造・販売・輸入等する営業者に求める事項

  • コンフリー及びこれを含む食品の製造・販売・輸入等の自粛
  • 回収等、営業者による自主的な措置の実施

*食品安全委員会の食品健康影響評価の結果が正式に示された後、コンフリーに対し、食品衛生法に基づく法的な措置をとることとなる。

(2)一般消費者に対し求める事項

  • 販売されたコンフリー及びこれを含む食品の摂取を控えること
  • 自生し、又は自家栽培したコンフリーについても、その摂取を控えること

シンフィツム(いわゆるコンフリー)に関するQ&A

Q1.シンフィツム(いわゆるコンフリー)とはどのようなものですか。

A1.別名ヒレハリソウともいう。ムラサキ科ヒレハリソウ属の多年草本で、主な種として、通常のコンフリー(Symphytum offcinale)、プリックリーコンフリー(Symphytum asperum)、ロシアンコンフリー(Symphytum x uplandicum)などがあります。コーカサスを原産地とし、ヨーロッパから西アジアに分布しています。草丈は60~90cmで、直立し、全身に粗毛が生え、葉は卵形~長卵形。初夏から夏にかけて花茎を伸ばして釣り鐘状の白?薄色の花を咲かせます。我が国には、明治時代に牧草として入り、一時長寿の効果があると宣伝され、広く家庭菜園に普及しました。(参考:丸善食品総合辞典(丸善株式会社) 他)

Q2.コンフリーを摂食することでどのような健康被害が知られていますか。

A2.諸外国では、コンフリーを摂取した場合の主要な健康被害として、肝障害が報告されています。主な肝障害は肝静脈閉塞性疾患で、主に肝臓の細静脈の非血栓性閉塞による肝硬変又は肝不全です。主症状は、急性又は慢性の門脈圧亢進、肝肥大、腹痛です。

Q3.コンフリーを含む製品を摂取していますが、どうすればいいですか。

A3.摂取を中止してください。また、気になる症状がある場合には、最寄りの医療機関で診察を受けてください。なお、日本国内でコンフリー又はこれを含む食品を摂取したことによる健康被害事例は、これまで報告されていません。

Q4.自生あるいは栽培しているコンフリーは有害ですか。

A4.自生あるいは栽培しているコンフリーであっても食用とすることで健康被害が生じるおそれがあると考えられるので、食用にはしないでください。なお、コンフリーが生育している環境中で生活していてヒトの健康に影響を及ぼすようなことはありません。

Q5.外国ではコンフリーの規制はありますか。

A5.米国では、コンフリーを含む栄養補助食品の自主回収等を勧告しています。カナダでは、コンフリーを含むNatural Health Productについては、当局の許可を得ている製品以外は販売禁止となっています。オーストラリアでは、コンフリーの一部の種類は意図的に食品に添加することを禁止する植物とされています。

Q6.コンフリーをゆでる、あげるなど加熱して摂食すれば、健康影響の恐れはなくなりますか。

A6.コンフリーを加熱することによって、その毒性が軽減されるというデータはありません。従って、加熱したものであってもコンフリー等を摂食することは避けてください。

平成16年6月18日

厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課

監視安全課

シンフィツム(いわゆるコンフリー)及びこれを含む食品の取扱いについて(その2)

シンフィツム(いわゆるコンフリー、以下「コンフリー」という。)及びこれを含む食品に関しては、平成16年3月24日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価について食品安全委員会委員長の意見を求めていたところ、昨日、緊急を要するとの食品安全委員会での議論から、国民からの意見募集に先立ち、食品健康影響評価の通知(別添省略*)がありました。これを受けて、コンフリー及びこれを含む食品については、食品衛生法第6条第2号に該当するものとして販売等を禁止することとしたので、情報提供いたします。

なお、この内容については、地方自治体及び関係事業者・消費者団体に対し通知したことを申し添えます。

また、食品安全委員会では、別添通知の別添審議結果に対して広く国民からの意見・情報を募っています。

[*別添:府食第667号 平成16年6月17日 厚生労働大臣坂口 力宛 食品安全委員会寺田雅昭発]

コンフリーに含まれる成分であるピロリジジンアルカロイド(Pyrrolizidine alkaloids)が、肝臓に有害作用を示すとされている。Pyrrolizidine alkaloidsには、多くの種類があるが、発癌性のものも知られている。プリックリーコンフリー(Symphytum asperurn)とロシアンコンフリー(Symphytum x uplandicum)は、コンフリー(Symphytum offcinale)よりPyrrolizidine alkaloidsを多く含み、また根には葉よりも高い濃度でPyrrolizidine alkaloidsが含まれるとする報告がされている。

諸外国における規制

過去コンフリー食品によって起きた肝障害の事例では、最少で15mg/kg・body weight/dayのPyrrolizidine alkaloidsを摂取して肝障害を起こしている。海外にはPyrrolizidine alkaloidsを規制をしている国もある。

  • 独逸:1992年ドイツ連邦健康局はハーブサプリメントからのPyrrolizidine alkaloids及びN-oxydo体の最大許容摂取量を0.1μg/日に定め、1年間に6週間までであれば、1日1μgまでの摂取は許容される。
  • 米国:2001年7月FDAより関係業界に対し、ある種のコンフリーは人の健康に重大な悪影響(肝毒性、発癌性等)を及ぼすPyrrolizidine alkaloidsが含まれることから、コンフリー等を含む栄養補助食品の自主回収等を勧告している。
  • 豪州・ニュージランド:2001年11月両国食品委員会は、コンフリー等に含まれるPyrrolizidine alkaloidsについて暫定的耐容摂取量(1μg/kgbw./day)を設定するとともに、コンフリーを食用に添加することや食用に供することを禁止している。
  • カナダ:2003年12月保健省より消費者に対し、コンフリーあるいはこれを含む食品について、肝障害を惹起する恐れがあるので、エチミジン(Pyrrolizidine alkaloidsの一種)を含む可能性があることから、これらの食品を使用しないよう勧告している。

なお、Pyrrolizidine alkaloidsが含まれる他の食用植物としてコンフリー以外に、フキノトウ(Petasites japonicus)、ツワブキ(Farfugium japonicum)、モミジガサ(Cacalia delphiniifolia;若芽が“シドケ”)、フキタンポポ(Tussilago farfara)、ヘリオトロープ(Heliotropium spp.;和名“キダチルリソウ”) などがある。

個別に詳しい調査はされていないが、Pyrrolizidine alkaloidsが含まれることが知られているセネシオ属の植物で、若芽が山菜として利用されるものにハンゴンソウ(Senecio cannabifolius)、オカグルマ(Senecio integrifolius)、サワギク(Senecio nikoensis)、サワオグルマ(Senecio pierotii)、ノボロギク(Senecio vulgaris)などがあるとされている。

また南米原産でハーブ茶として利用されているマテ茶(Ilex paraguayensis)にもPyrrolizidine alkaloidsが含まれるとする報告がされている。

Pyrrolizidine alkaloids以外の有害アルカロイドを含む食用植物として、ワラビ(Pteridium aquilinum)などが知られている。ジャガイモも芽や芋が緑色になった部分には有毒アルカロイドのソラニンが含まれている。

これらの食品の多くは、長年の食経験があり、季節の山菜は食べられる季節が限定され、摂食する場合あく抜き等の調理をすることで、アルカロイドをある程度除去することが可能である。

また、胎児や幼児はコンフリーに含まれる有害成分への感受性が高いとされているため、摂食は回避する。妊娠中にコンフリー食品を利用し、胎児に毒性が現われたとする報告がされているので、特に妊産婦はコンフリーやコンフリー食品を摂食しないよう注意することが必要である。

[015.9.CON:2004.7.26.古泉秀夫・2004.12.26.改訂]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  2. 奥本裕昭・訳:イギリス植物民俗事典;八坂書房,2001
  3. 手塚千史・訳:大地の薬-ヨーロッパの薬用植物の神話、医療用途、料理レシピ-;あむすく,1996
  4. 厚生労働省ホームページ;http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0614-2.html,2004.7.1.
  5. 難波恒雄・監訳:世界薬用植物百科事典;誠文堂新光社,2000
  6. http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0614-2.html,2004.12.14.
  7. http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/06/tp0618-2.html,2004.12.14.
  8. )http://www.co-op.or.jp/jccu/news/syoku/syo_040628_01.htm,2004.12.14.

抗コリン作用のない鎮痙薬

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:臨床薬理・抗コリン作用・鎮痙薬・antispasmodic agents・平滑筋弛緩薬・mooth muscle relaxants

Q:抗コリン作用のない鎮痙薬としてどの様なものがあるか

A:鎮痙薬(antispasmodic agents)とは、平滑筋、特に消化管平滑筋の痙縮を抑制する薬物をいう。鎮痙薬という呼称は、最近あまり使用されず、平滑筋弛緩薬(smooth muscle relaxants)といわれる方が多いとされる。

向筋肉性鎮痙薬

(myotropic antispasmodics)

平滑筋に直接作用し て痙縮を抑制する。

papaverine、キサンチン誘導体(テオフィリン、カフェイン、テオブロミン)

向神経性鎮痙薬

(neurotropic antispasmodics)

平滑筋を支配する自 律神経あるいはその受容体に働いて弛緩を起こす。

抗コリン作動薬(アトロピン及びその代用薬)、アドレナリンβ-受容体作用薬、自律神経遮断薬など。

以上の鎮痙薬は、内臓平滑筋の痙縮に伴う疼痛を除去する目的で臨床応用される。

  • papaverine:アヘンアルカロイド中に約1%含まれるイソキノリン誘導 体であり、合成可能である。モルヒネと異なり鎮痛、麻酔、耽溺性等の中枢作用は全て認められない。papaverineの平滑筋弛緩作用は筋に対する直接作用であるが、詳細な作用機序は不明である。抗不整脈作用(伝導を抑制し不応期を延長するキニジン様の抗不整脈作用を持つ)。消化管、胆道などの痙縮を抑制して疝痛を除く。添付文書中に慎重投与として緑内障(眼圧上昇により悪化)の記載がされているが、抗コリン作用があるとする報告は見られない。
  • xanthine derivatives(キサンチン誘導体):caffeine、theophylline、テオブロミンなどのキサンチン誘導体には平滑筋弛緩作用がある。中でもtheophyllineの作用は最も強く、しかも中枢興奮作用はcaffeineに比べて弱い。theophyllineは血管及び気管支の拡張作用が著しい。臨床的には気管支喘息に用いられる。theophyllineの平滑筋作用は消化管では僅かである。抗コリン作用があるとする報告は見られない。
  • belladonna alkaloids:atropine、scopolamine。抗コリン作用を有する。
  • adrenergic drugs(アドレナリン作動薬):交感神経支配下の効果器官に対するアドレナリン(adrenaline=epinephrine)の作用は二つの異なった受容体に対し、adrenalineが結合することにより起こる。adrenaline受容体にはα-受容体とβ-受容体の2種類がある。β-受容体のうちβ2-受容体は平滑筋及び腺に存在し、抑制効果を生ずる。抗コリン作用があるとする報告は見られない。
  • autonomic ganglion blocking drugs(自律神経節遮断薬):hexamethonium bromide(臭化ヘキサメトニウム)、pentolinium bitartrate(重酒石酸ペントリニウム)等は早期に使用された強力な抗高血圧薬であるが、交感神経節、副交感神経節をともに遮断するために副作用が多く、現在、使用されていない。

なお、参照として、鎮痙剤に分類されている医薬品について、抗コリン作用があるため、緑内障患者等に使用禁忌とされている薬剤を以下の通り一覧 としたので、参考とされたい。ただし、薬剤の使用に際しては、添付文書を確認すること。

一 般名・商品名(会社名) 緑内障 前立腺肥大等下部
尿路閉塞性疾患
参照資料
禁忌 慎重 禁忌 慎重
anisotropine methylbromide
(methyloctatropine bromide)
バルピン錠・注(三共)
?
[前立腺肥大]
添付文書
,2000.3.
atropine sulfate
硫酸アトロピン末・注(田辺)
?
[前立腺肥大]
添付文書
2000.6.
butropium bromide
コリオパン錠・Cap.・顆粒
(エーザイ)
?
[前立腺肥大]
添付文書
2000.11.
methylbenactyzium bromide・dried aluminium hydroxide gel・aluminum silicate等
ファイナリンG(山之内)
?
[前立腺肥大]
添付文書
2000.2.
N-methylscopolamin
methylsulfate
ダイピン錠(第一製薬)
?
[前立腺肥大]
添付文書
1998.8.
papaverine hydrochloride
塩酸パパベリン注(大日本)
? ? ? 添付文書
1999.6.
piperidolate hydrochloride
ダクチル錠(キッセイ)
?
[前立腺肥大]
添付文書
1999.1.
pipethanate ethobromide
パンプロール錠・注(日本新薬)
?
[前立腺肥大]
添付文書
1999.6.
scopolamin butylbromide
ブスコパン錠・注(田辺)
?
[前立腺肥大]
添付文書
1998.9.
scopolamine hydrobromide
ハイスコ注(杏林)
?
[排尿障害]
添付文書
1999.6.
scopolia extract -製造中止-  
scopolia extract and tannicacid
ロートエキス・タンニン坐剤
(佐藤製薬)
? ? ? 添付文書
1999.12.
tiemonium iodide
ビセラルジン錠・注(日本臓器)
?
[前立腺肥大]
添付文書
1998.11.
timepidium bromide
セスデンCap.・細粒・注(田辺)
?
[前立腺肥大]
添付文書
2000.1.

[015.4.ANT:2004.7.6.古泉秀夫]


  1. 医学大辞典;南山堂,1992
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  3. 笹 征史・他:薬理学;金芳堂,1990
  4. 仮家公夫・他:疾患別薬理学;廣川書店,1988

こむら返りの発現理由

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:語彙解釈・こむら返り・有痛性筋痙攣・腓返り・ふくらはぎ・腓腹筋・平目筋・痙攣・つる

Q:最近、店頭で足がつる等の相談を受けることがあるが、『つる』の表現にはこむら返りが含まれ ていると考えられるが、これの発生原因について。

A:“こむら返り”の“こむら”は、ふくらはぎのことであり、“こむら返り”とは、ふくらはぎの筋肉、腓腹筋と平目筋が痙攣を起こすことを指している。

いわゆる筋肉が“つる”という状態で、他の場所の筋肉でも“つる”という状態はよく起こるが、なかでもふくらはぎの筋肉は、非常に“つり”やす いことで知られており、これが代表的な呼称になり、他の筋肉がつった場合でも、“こむら返り”(有 痛性筋痙攣)として、症状を訴える場合があるとされている。

“つる”という現象は、一つの筋肉に痙攣が起こり、連続的に収縮が起こるために、一つの筋肉だけが硬くなって盛り上がった状態が続き、その筋肉 がかなり痛いというのが特徴である。

こむら返り”の原因については、

  1. 制御装置が働かない場合
  2. 細胞の興奮性が異常に亢進している場合

があると考えられる。また、“こむら返り”には、

  1. 生理的に起こる(普通の健康なヒトに起こる)こむら返り
  2. 病気の症状として起こるこむら返り

の二つの原因があると考えられている。

腓返りの発生原因 発生理由
生理的原因 準備運動不足状況での激しい 運動。同じ動作の繰返しによる筋肉の硬化による痙攣。筋肉疲労。睡眠中に突然寝返りを打った時に“つる”という状態。
病的原因 電解質異常(低カルシウム血 症状態・低カリウム血症状態。特にナトリウム低下が影響)。嘔吐・下痢による電解質低下。脱水。塩分不足。ホルモン異常(甲状腺機能低下症等)。糖尿病時 (非常に早期-他の症状発現前-原因不明)。慢性肝炎・肝硬変。脊髄の運動細胞の病気、末梢神経の病気。β-遮断剤服用、一部の抗癌剤服用。

何年かに1回程度の発作であれば、特に心配はないが、年に何回か必ず起こるという場合(健常人でも起こる)には、何かの病気の始まりである可能 性がある。月に何回も起こるということであれば、何か異常があると考えるべきで、精密検査を受ける。

単なる“こむら返り”の場合には、運動前・就寝前に、ふくらはぎの筋肉の伸縮を十 分に行う準備運動を実施すれば、“こむら返り”を惹起させない効果があるとされている。

就寝時に起こる『こむら返り』について、爪先が延びて、足の後ろ側のふくらはぎ の筋肉が縮んだ状態になっている。

このようにふくらはぎの筋肉が縮んでいると、運動神経の末端が変形して興奮しやすくなるといわれている。大脳から指令もでないのに、勝手に末梢神経が興奮して筋肉を収縮させ、痙攣を惹起する。

更に寝ている時は足の裏に圧がかかっていないので、緊張をゆるめるためのフィードバック機能もあまり働かず、筋肉の収縮をますます促進してしまうとされている。

水泳中の『こむら返り』も睡眠中と同様に、水中で爪先が真っ直ぐ伸びてふくらは ぎの筋肉が縮んだ状態になっているために惹起するとされている。

[615.8.CRA:2004.6.1.古泉秀夫]


  1. 社団法人日本薬剤師会・編:気になる症状から見た疾患-木下真男:こむら返り;薬事日報社,2001
  2. 水谷智彦:ちょっと気になる身体の異常-こむら返り;ヘルシスト,No.0147:52-55(2001.3.1.)
  3. 北岡治子:こむらがえり;臨床と薬物治療,12(6):793-796(1993.9.)
  4. 亀谷麒与隆:慢性肝疾患とこむら返り;日本医事新報,No.3290(1987)
  5. 宮川俊平:こむら返りの原因と治療;日本医事新報,No.3743(1996)
  6. 広瀬源二郎:高齢者での下肢筋痙攣(こむら返り);日本医事新報,No.4059(2002.2.9.)
  7. 葛原茂樹:就寝中に起こる有痛性筋痙攣;日本医事新報,No.3656(1994)

降圧剤の併用について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬物療法・降圧剤・併用療法・高血圧治療ガイドライン・Ca拮抗薬・ACE阻害薬・AII受容体拮抗薬・利尿薬・α-遮断薬・β-遮断薬

Q:現在、高血圧治療薬服用中の患者にCa拮抗剤が追加処方された。高血圧治療目的でどの範囲ま で併用療法は承認されるのか

A:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会による『実地医家のための高血圧治療ガイドライン』に次記の記載がされている。

[1]第一選択薬の決定

Ca拮抗薬、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(AII受容体拮抗薬)、利尿薬、β-遮断薬(含αβ遮断薬)、α遮断薬の何れか を低用量から用いる。降圧薬の選択に際しては、以下の要因を考慮し、個々の患者に適した薬物を使用する。

  • 心血管病の危険因子:高齢、性別、喫煙、肥満、高脂血症、耐糖能異常、心血管病 の家族歴など。
  • 標的臓器障害、心血管病、他の合併症
  • 降圧薬の副作用、QOLへの影響
薬剤 積極的な適応 禁忌
Ca拮抗薬 高齢者、狭心症、脳血管障 害、糖尿病 心ブロック(ジルチアゼム)
ACE阻害薬 糖尿病、心不全、心筋梗塞、 左室肥大、軽度の腎障害、脳血管障害、高齢者 妊娠、高カリウム血症、両側 腎動脈狭窄
AII受容体拮抗薬 ACE阻害薬と同様、特に咳 でACE阻害薬が使用できない患者 妊娠、高カリウム血症、両側 腎動脈狭窄
利尿薬 高齢者、心不全 痛風、高尿酸血症
β-遮断薬 心筋梗塞後、狭心症、頻脈 喘息、心ブロック、末梢循環 不全
α-遮断薬 脂質代謝異常、前立腺肥大、 糖尿病 起立性低血圧

[2]降圧薬の変更と追加

低用量の第一選択薬によって140/90mmHg未満に到達しない場合は、忍溶性が良ければ同薬を増量するが、常用量の2倍以上の高用量は避ける。

同一薬の増量によっても目標血 圧値に到達しない場合には相加・相乗効果が期待できる薬物を併用する。

実地臨床でしばしば行われる併用療法には以下のものがある。第一選択薬の投与で効果が見られず忍溶性が悪い場合には、別のクラスの降圧薬に変更する。

併用時組合せ 各薬剤の特徴
Ca拮抗薬 ACE阻害薬 Ca 拮抗剤:血管平滑筋の細胞外から細胞内へ入るCa++ を抑制して血管拡張をもたらす。

降圧効果が良好で、重篤な副作用がないことから日本では最も多く使用されている。

Ca拮抗剤の利点は、降圧にも係わらず脳循環、冠循環、腎循環及び末梢循環を良好に保ち、糖・脂質代謝への悪影響がないことである。

ベンゾジアゼピン系に属するジルチアゼム(降圧効果はそれほど強力ではないが、心伝導系への抑制効果を有し、心収縮力の軽度の低下と心拍数を減少させる特徴がある)は、心伝導系の抑制により徐脈や房室ブロックをきたすことがある。

副作用:顔面紅潮、頭痛、動悸、更に上・下肢の浮腫、便秘、歯肉増生などが見られることがある。

Ca拮抗剤を高血圧治療薬として用いる場合、短時間作用型は安定した高圧が得ら れ難く、動悸・頭痛などの副作用が出現しやすく、しかも服薬継続率が悪いので、長時間作用型を用いるべきである。特に短時間作用型で見られる反射性交感神経活性亢進は虚血性心疾患を増悪させる可能性がある。

Ca拮抗薬 AII受容体拮抗薬
Ca拮抗薬

(DHP)

相互作用-併用回避

ジルチアゼムのような徐脈をきたすCa拮抗薬とβ遮断剤の併用

β-遮断薬
ACE阻害薬

相互作用-併用回避

高カリウム血症をきたしやすいACE阻害薬とカリウム保持性利尿薬の併用

利尿薬 ACE阻害薬は、降圧効果に 加えて心血管系の肥厚を改善させ、動脈硬化の進展阻止効果を有している。

糖代謝や脂質代謝に悪影響を与えず、インスリン抵抗性を改善させる効果も有する。

その他蛋白尿減少効果、心不全や心筋梗塞後の予後改善効果がある。

また脳血流自動調節能下限域の上方偏位を改善する。

副作用:咳嗽(服用者の20-30%)、稀に血管神経性浮腫による呼吸困難を生ずることがある。

妊婦に伴う高血圧には使用禁忌。両側腎動脈狭窄症や高カリウム血症にも使用を避ける。

AII受容体拮抗薬

相互作用-併用回避

高カリウム血症をきたしやすいAII受容体拮抗薬とカリウム保持性利尿薬の併用

利尿薬 心血管系にはACE以外にキ マーゼなど、アンジオテンシンIからAIIを産生する酵素が存在することからAII受容体拮抗薬はACE阻 害薬より広範囲にAIIの作用を抑制すると考えられる。

降圧効果はACE阻害薬と同等であるが、副作用は少なく、特にACE阻害薬に見られる咳は起こらないので、良好な服薬継続が期待できる。適応・禁忌は ACE阻害薬に準ずる。

β-遮断薬 α-遮断薬 β-遮断薬は各薬物によってその性状がかなり異なる。β受容体のうち、主としてβ1受容体に選択的に作 用する薬物か、β2受容体の遮断効果をも有する薬物かどうか、脂溶性か水溶性か、あるいは内因性交感神経刺激作用を有するか否かによって分類される。更に最近α1遮断効果やCa拮抗作用あるいはカリウムチャンネル開口作用などを有し、末梢血管拡張作用を有するβ-遮断薬が登場している。

虚血性心疾患を有する高血圧や頻脈を有する高血圧に適する。心筋梗塞の予防効果 を有することが証明されている。

副作用:徐脈、房室ブロック等があり、末梢循環障害をきたしやすい。更に喘息等の閉塞性肺疾患を増悪させる。倦怠感や運動の能力低下をきたしやすく、高齢者には適さない。

α-遮断薬の降圧効果は、細動脈の拡張作用に基づき、交感神経活性の高い例に効 果的である。糖・脂質代謝に良好な効果を有し、前立腺肥大を有するものでは排尿障害を改善する利点がある。

副作用:起立性低血圧、高齢者の食後血圧低下等。

利尿薬 β-遮断薬 サイアザイド系利尿薬及びその類似薬が最も良く用いられる。

低カリウム血症、低マグネシウム血症をきた しやすいほか、高尿酸血症、高脂血症、耐糖能異常、血液濃縮、勃起障害などの副作用をきたすが、低用量で用いればこれらの副作用は少ない。

低カリウム血症を防止するために、ACE阻害薬(AII受容体拮抗薬)やカリウム保持性利尿薬(スピロ ノラクトン、トリアムテレン)、あるいはカリウム製剤の併用が勧められる。

ループ利尿薬とし てはフロセミドが頻用されており、血清クレアチニンが2.0mg/dL以上の腎不全を有する高血圧に 用いられる。

◆Ca拮抗薬を狭心症薬として用いる場合、Ca拮抗薬単剤でコントロールできない 場合に硝酸薬との併用、更にはnifedipineとdiltiazemの併用(nifedipineの血中濃度が上昇)が有用である。また降圧薬として用いる場合、Ca拮抗薬(nifedipine、diltiazem)は他の降圧薬(降圧利尿薬、β-遮断薬、ACE阻害薬)と併用しやすい。

◆K保持性利尿薬は、単独では利尿降圧効果は弱く、チアジド系利尿薬、ループ利尿 薬による低K血症の阻止、利尿効果の増強のための補助に用いることが多い。チアジド系利尿薬は、降圧利尿薬として高血圧症に対する第一選択薬の一つである。最近では、使用量を少量に止め、他剤との併用が行われている。

等の報告がされている。

[035.1.HYP:2004.4.6.古泉秀夫]


  1. 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会・編:実地医家のための高血圧治療ガイドライン;日本高血圧学会,2001
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004

骨粗鬆症治療薬の投与簡略化

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬物療法・骨粗鬆症治療薬・投与簡略化・ビスホスフォネート製剤・アレンドロン酸ナトリウム・alendronate sodium・フォサマック・Fosamax

Q:週1回の投与で治療可能な骨粗鬆症治療薬について

A:ビスホスフォネート製剤であるアレンドロン酸ナトリウム(alendronate sodium)の製剤であるフォサマック(FosamacTM)は5mg/錠が万有製薬から市販されているが、国外において新規格単位製剤として70mg/錠の製造承認申請がされたとする報告がみられる。

70mg錠は、週1回の投与で、5-10mg毎日1回投与と同等の効果を示すことが、閉経後骨粗鬆症の臨床検討において確認されたと報告されている。

また週1回投与のalendronate(FosamaxTM)35mg及び70mg錠がFDAで承認され、閉経後骨粗鬆症の予防及び治療薬として有用だとされているが、その他にもリセドロネート(risedronate)製剤であるアクトネル(ActonelTM)が新しい週1回投与製剤の開発を進めており、製造承認が得られ次第、発売を計画しているとされる。

alendronateの様なビスホスホネートは、破骨細胞の機能を阻害し、骨吸収を低下させる。本剤の活性は、骨において数週間持続する。

1日1回投与のalendronateの主な欠点は、重症の食道粘膜刺激の可能性を避けるために必要な投与方法、空腹時に背筋を伸ばしコップ1杯の水で素早く服用し、少なくとも30分間は正しい姿勢を保った後、横になる前に食事を取らなければならないことである。

alendronateの週1回投与と1日1回投与を比較した臨床試験は、1件しか発表されていない。この閉経後骨粗鬆症の女性889例を対象とした1年間の試験で、いずれの投与法でも骨密度の増加における効果は同等であることが示されたが、骨折の低下に関する比較資料はない。消化器毒性も同等であったとする報告が見られる。

またrisedronate sodium hydrate(Procter & Gamble)の週1回投与型の製剤は、骨粗鬆症の適応で2002年1月17日にFDAに承認されたとする報告も見られる。

[035.1.ALE:2004.3.16.古泉秀夫]


  1. 週1回投与の骨粗鬆症治療薬;薬事日報,2000.4.14.
  2. 週1回投与のアレンドロネート(Fosamax);The Medical Letter<日本語版>,17(6):25-26(2001.3.19.)
  3. 明日の新薬CD-ROM版,2002.8.27.
  4. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004

昆虫忌避剤について

金曜日, 8月 10th, 2007

KW:薬名検索・殺虫剤・防虫剤・虫除け剤・昆虫忌避剤・蚊・刺咬症・ディート・DEET・AUTAN・DEET・DETAMIDE・ Dieltamid・Diethyltoluamide・シトロネラ・Citronella・ユーカリオイル・eucalyptus-oil・ペルメトリン・permethrin・ピカリジン・picaridin・六塩化ベンゼン・BHC・リンデン・HCH

Q:寄生虫による刺咬を防止するための虫忌避剤について

A:種々の防虫剤(昆虫忌避剤)について、次の報告がされている。なお、昆虫忌避剤ではないが、適応外使用で疥癬虫感染症への投与がいわれている薬剤について、参照迄に収載した。

化合物名 概要 性状
六塩化ベンゼン

(benzene hexachloride;benzol chloride)

別名:BHC・リンデン・HCH・六塩化ベンゼン

1,2,3,4,5,6-hexachlorocyclohexane

*接触性殺虫剤であるが、農薬としての使用は全面的に禁止されている(1949年2月24日登録・ 1971年12月30日失効)。接触毒で、角皮より吸収されて神経系を侵す。また揮発性であるため、呼吸毒としての作用もある。殺虫剤。家庭用殺虫剤。防疫用剤。シロアリ駆除剤。

*有機塩素系の薬剤で、幾つかの異性体の混合物だが、γ-BHCのみに速効性の 接触毒作用があり、その精製品はリンデンと称される。

*疥癬の治療に際しpermethrintの方がBHCよりも(臨床的及び寄生 虫的、主観的治療の面で)効果的なように思えた。臨床的治療の面で評価すると、クロタミトンとBHCとの間に違いはないように思えた。

*純品は白色の結晶で、幾分 揮発性があり、通常のものは僅かに黄色を帯びた白色で、特異な刺激臭がある。水には不溶、各種の有機溶媒に溶ける。

*LD50(マウス経口)74mg/kg(γ体 95%)。

シトロネラ (Citronella) *citronella-oil。セイロンシトロネラソウ(Cymbopogon nardus Rendle)又はジャワシトロネラソウ(C.winterianus Jowitt)の葉の水蒸気蒸留で得られる精油。

*本剤を用いた虫除け剤は、蚊に対して短時間の防虫効果(1時間未満)があるが、おそらくダニには無効である。

*室内試験において、本品を活性成分とするものは約20分の持続効果を示した

*虫除け、蚊遣り、洋服の虫除等。また室内のダニ対策に。「レモングラス」を強力にした柑橘系の芳香をであるが、イネ科植物である。皮膚刺 激があるので、直接皮膚に塗布しない。

*Citronellaはイ ネ科植物。インドに産し、熱帯各地で栽培される多年生草本。全草を水蒸気蒸留し、シトロネラ油を得る。

geraniolとcitronellalを主成分とし、食品、香粧品香料などにされる。

ディート(DEET)

別名:AUTAN;DEET;DETAMIDE;Dieltamid;Diethyltoluamide。化学名:N,N- diethylmetatoluamide。

[商]Ultrathon(米国・3M)・虫除けキンチョールパウダーイン(大日本除蟲菊)・サラテクト(アース)・ウナコーワ虫除けスプレーS(興和)

*現在、最も効果が持続するのは本品であるが、合成繊維やプラスチックを腐蝕する。種々の蚊、ツツガム シ、ダニ、ノミ及びサシバエを寄せ付けないが、ミツバチやスズメバチのように針で刺す昆虫に有効な虫除け剤はない。

*DEETは兵士用に米軍が開発した。蚊やダニから、及び蚊やダニが媒介する病 気(ツツガムシ病や日本紅斑熱など)から個人を防護するためには非常に優れた薬剤である。

また、風土病が蔓延するような地域では特に重要な薬剤である。

*米国で販売されているDEETは5-40%及び100%製剤である。

含有量20%未満のDEET製品が完全に昆虫を予防できるのは1-3 時間である。防虫効果の持続時間は濃度が高くなるほど長くなる(最大12時間)が、濃度が50%を超えるとプラトーに達する。

元々は米軍のために開発された長時間作用型昆虫忌避剤。本剤は皮膚表面からの吸収や蒸発による損失を防ぐ長時間作用型ポリマー製剤に25%又は33%のDEETが含まれる。

周囲の状況や蚊の種類によって異なるが、この製品は6-12時間にわたり蚊による刺咬を95%以上防止し、この効果はアルコールを基剤とする75%DEETだったとする報告。

*DEETに対する毒性反応やアレルギー反応は殆ど無く、重篤な副作用は稀であ る。

指示通り使用した場合、最大50%の濃度までは幼児でも安全だと思われる。

中毒性脳障害は、一般に幼児及び小児に長期使用又は過量を使用した場合に認められているほか、ときに製品の経口摂取によって認められている。

発疹は軽度の炎症から蕁麻疹及び疱疹までの範囲で報告されており、一部のDEET製品は、患者の皮膚に不快な油っぽさや、べたつき感を与える。

DEETは妊娠の中期及び後期にも安全に使用されている。

*長期連用により脳障害を起 こすの報告。

*DEETは合成繊維で作られた衣類、メガネのフレームに用いられているプラスチック及び腕時計のガラスに損傷を与えることがある。

*湾岸戦争症候群の原因物質の一つとしてDEETは疑われており、DEETは他の農薬などと同時に使用すると、単独の化学物質が起こすより、重度の神経障害を招くことが知られている。DEETを使用する場合、他の薬物に被曝しない注意が必要である。カナダでは厳しく規制することになった。

ユーカリオイル

(eucalyptus-oil)

*最近発売されたeucalyptus-oilを用いた虫除け剤は、野外試験で蚊に対して最大4時間の 防虫効果を示した。室内試験では短時間のみの防虫効果を示した。

*主成分はcineole(eucalyptol)(約70%以上)である。

*eucalyptus-oilは拡散浸透性が強いため、ヒョウダニ駆除に有効 性を示す。スプレーされたeucalyptus-oilの微粒子が、布地の織目-顕微鏡的な繊維の間隙にまで浸透し、ヒョウダニの体を直撃する。

油とよく混和すること、これと拡散浸透力が強い性質によって、洗濯のとき、普通の洗剤だけでは到達しない織目の間隙に水や洗剤を浸達させ、間隙にひそむヒョウダニを溺死させるとする報告がみられる。

*ユーカリ油は、ユーカリの 木(Eucalyptus globulus Labillardi