ギムネマ摂取により眼圧亢進は起こるか
木曜日, 8月 9th, 2007KW:副作用・健康食品・ギムネマ・ブカトウ・武靴藤・眼圧亢進・抗コリン作用
Q:ギムネマ摂取中の患者で眼圧亢進が見られるが、本品の摂取により眼圧亢進は起こるか
A:ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvesta)は、インド・アフリカに自生するガガイモ科の低木で、インド伝承医学アユルベーダの古典「スシュルータ本集」に肥満と大食を伴う病気の治療薬として記載されているの報告がされている。葉にギムネマ酸(gymnemic acid)というトリテルペン配糖体を含み、この成分は味覚のうち甘味だけを抑制するので、これを口に含んだ後は砂糖を舐めても砂のようにしか感じられないとされている。
また、ギムネマ酸には、腸管での糖吸収抑制作用や抗う蝕作用があるといわれ、糖尿病によいとされているが臨床的に有効かどうかの証明はされていない。
*Gymnema sylvesta(Retz.)Schult.、ブカトウ;武靴藤。ガガイモ科の植物。
- [薬理]ラットに葉のアルコール抽出液を経口投与するか又は筋肉内注射すると、垂体前葉エキス、垂体成長ホルモンを抑制するか又は腎上腺皮質ホルモンの引き起こす高血糖を促す。
大阪府立大学農学部の中野 長久教授は、インドに自生するガガイモ科属の蔓性植物ギムネマシルベスタから抽出した糖アルコールの一種「コンズリトールA」が糖尿病予防などに有効であることをラットを使った実験で確認した。
ギムネマシルベスタは野生植物で、抽出されるギムネマ酸は甘味抑制作用、グルコース吸収抑制作用があることが知られている。同教授はギムネマシルベスタの葉を熱水中に入れて有効成分を抽出した後、その中に含まれるギムネマ酸を沈殿させ、残った水を活性炭、合成樹脂、クロマトグラフィーを使って分離・精製してコンズリトールAを得た。健康ラット12匹に同物質を混ぜたえさを与え、8週間後に比較した結果、体重は平均約320gと実験開始から140g程度増え、その期間の腸内グルコースの量が約100mg/dLと低い数値で、殆ど変わらないことが分かった。
また、糖尿病モデルラット12匹で同様の実験を行ったところ、混合えさを摂取させたラットの体重増加は約210gで、正常ラットに比べて生育スピードは落ちるものの、グルコース量が平均約300mg/dLとなり病状好転が見られた。一方、通常のえさを摂取したラットは体重が約145gから160gと生育が遅く、グルコース量も平均約500mg/dL程度と症状が顕著になった。
ギムネマシルベスタの葉は、肥満予防、糖尿病薬として用いられているが、ギムネマ酸を除いた抽出液については確認されていない。ペルー産の植物コンズランゴからコンズリトールA?Fまで6種類の物質が確認されているが、有効性など化学的な証明はされていなかった等の報告がされている。
現在、ギムネマシルベスタ中に含まれる成分の詳細については、情報の入手が困難である。
一方、薬剤性の眼圧亢進については、「抗コリン作用を有する薬剤では、散瞳とともに房水通路が狭くなり、眼圧が上昇し、症状を悪化させる」等の報告が見られる。本品の含有成分の詳細は不明であるため、副交感神経遮断作用を有する物質が存在するか否かは不明であるが、多様な成分の存在が想定されることからあるいは抗コリン作用を有する薬剤同様の機序により眼圧亢進が見られる可能性は否定できない。
従って、他に原因が求められない場合、本品の摂取を一時中断し、眼圧変化について、経過の観察をすることが必要である。
[065.GYM:2000.5.24.古泉秀夫]
- 社団法人山口県薬剤師会薬品情報センター:Drug View No.40,1990.8.25
- 上海科学技術出版社:中薬大辞典;小学館,1985
- 糖尿病に効く物質抽出-大阪府立大インド原産植物から-;日刊工業新聞,1991.9.26.
- 糖尿病に「ギムネマ・シルベスタ」;読売新聞,1987.5.21.[医薬品情報,17(7):613(1990)]
- パック入り細咲茶;読売新聞,1995.9
- 健康産業新聞;第851号,1996.11.7.
- 薬局新聞;No.2255,1996.5.22. 8)第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996