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キチン・キトサンについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・キチンキトサン・甲殻類・昆虫類・外骨格・キトサン・ ?chitosan

Q:キチン・キトサンを常用している患者がいるが、これは何か。主作用あるいは副作用等について知りたい。

A:キチン(chitin)は、甲殻類、昆虫類や菌類の外骨格を形成する多糖体である。

キトサン(chitosan)は、キチンをアルカリ加水分解して部分的に脱アセチル化したものであり、天然物であるため、安全性と生体内分解性を持つことから医療分野での応用が検討されてきた。

なお、キチンを脱アセチル化した場合、100%のキトサンが得られるわけではなく、キトサン 85?90%、キチン 10?15%の混合物として得られる。この混合物をキチン・キトサンの純品としている。

現在、キチンシートが熱傷用被覆剤として発売されている。その他、高分子凝集剤としても使用されてきた。

しかしキチン・キトサン(chitin and chitosan)の持つ生体内消化性や抗腫瘍活性、金属イオンとの錯体形成、蛋白質吸着性、抗菌性といった様々な性質が報告されるようになり、その応用範囲が広がり始めた。

医療分野においても、天然由来の特性を生かした創傷被覆剤や徐放性製剤、免疫吸着樹脂など、数多くの提案がされるようになっている。

キチンは生体内消化性を示すことが知られているが、その作用は生体内グリコシダーゼの一種であるリゾチームによって発現する。

リゾチームは本来N-アセチルムラミン酸とN- アセチルグルコサミンのβ-1,4結合を分解する酵素であるが、基質特異性が低いため、キチンにも作用する。リゾチームによる分解性は、キチンのアセチル基を70%脱アセチル化したキトサンやC-6位にカルボキシメチル基を導入したCMキチンで高くなり、C-3位にカルボキシメチル基を導入したCMキチンは逆に低下する。

硫酸化キチン、リン酸化キチンのリゾチーム受容性も非常に低い。また、天然のキチンは分解性が非常に緩やかであるが、一度溶解して再生したキチンは、強固な結晶構造が緩和されるため、分解性が高くなる。

このようにキチン・キトサンは化学修飾をうまく利用することにより、分解性をコントロールできるため、医薬品の徐放性製剤として期待できる。

  • ヘパリン類似構造:キチン・キトサンはヘパリンに類似した構造を持つことが知られている。比較的簡単な化学的修飾を加えることで抗血栓性を付与することができる。生体内消化性やこれに関連して発現すると思われる低免疫原性と併せて、創傷被覆剤や人工皮膚、人工血管などへの利用にも有利な素材といえる。
  • 免疫応答性:キトサンはマクロファージとコロニー形成刺激因子(CSF)産生細胞を活性化し、各々の細胞がCSFとインターロイキン(IL-1)を産生する。CSFは、骨髄細胞に働きかけてマクロファージへの刺激を促す。一方、IL-1はヘルパーT細胞に働きかけて、インターロイキン2(IL-2)を産生させ、細胞障害T細胞を誘導する。更にヘルパー T 細胞はB細胞にも作用して、抗体産生細胞を刺激し、抗体産生を促す。この仕組みは完全に解明されたわけではないが、キチン・キトサンが複数の経路に働いて、免疫応答性を導くことはほぼ間違いない。
  • 抗コレステロール作用:キトサンを経口投与するとコレステロールが減少する。キトサンに4級アミンを導入したものの抗コレステロール作用が報告されている。 *抗腫瘍活性作用:癌移転抑制剤。キチン・キトサンオリゴ糖(2?7糖)、特に6糖を有効成分とする。中枢神経抑制剤としても効果を有する。これにブレオマイシンを加えると、各々単独では発現しないMM-46腫瘍に対しても効果がある。
  • 抗菌作用:虫歯の原因となるStreptococcus mutansを主とした各種口腔内連鎖球菌に対し、抗菌作用を有することが確認されている。脱アセチル化度が40?60%の水溶性キトサン、キトサン酸塩、親水基を導入したキチン・キトサン、オリゴ糖でStreptococcus muta nsの感染防御。その他、キチンを分解して得られる5又は6糖のキチンオリゴ糖を注射剤として検討。
  • 抗ウイルス作用:後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原ウイルス(HIV)に対して効果を有するものとして、10?70%カルボキシメチル化し、1?20%硫酸化されたキチンが抗HIV活性を持つ。 *肝疾患治療効果:キトサンを主成分とし、CM-セルロースナトリウムやラクトースを加えて製剤化。 *高尿酸血症改善効果:キトサンを経口投与。キチンを経口投与すると、尿中に尿酸量と血漿中の尿酸量を低下させる。尿中アラントイン量も低下する。

なお、キチン・キトサンの服用により「好転反応」による発汗、便秘、痺れ等が報告されている。

その他、キチン・キトサン関連情報として、新聞等に報道された内容を以下に紹介する。

*パルプから取った繊維、ポリノジックに、カニやエビの殻から取ったキトサンの粉末を練り込んだ下着、寝具類(富士紡績)が開発された。キトサンはじくじくした症状を悪化させる黄色ブドウ球菌の繁殖を抑える効果があり、軟らかい繊維で分子の小さいポリノジックは保湿性が高く、肌への刺激が少ないという。

* がんの転移を防ぐものとしては、動物の肝臓などに多く含まれ、血液の凝固を抑制している生理活性物質(ヘパリン)があるが、出血の際血が固まりにくくなるなど副作用があり、がん転移防止薬としてはあまり使われない。

北海道大学免疫科学研究所の東市郎教授らはカニやエビの殻の成分である「キチン」がヘパリンに類似していることに着目、キチンを化学処理して転移防止薬を開発することを考えた。

開発されたのはキチンヘパリノイドと呼ばれる物質で、足に皮膚がんを移植したマウスを使って肺への転移防止効果を調べた。この物質を皮膚がん除去手術前と後に投与し、手術後2週間後に肺に発生したガン細胞のかたまりの個数を数えた。この結果、キチンヘパリノイドを投与しないマウスには転移がんが平均62個発生したのに対し、手術前投与群でわずか平均4個、手術後投与のケースでも平均9個と強い転移抑制効果があることがわかった。

ヘパリンを投与したマウスでは手術前投与群で平均19個、手術後でも24個と、キチンヘパリノイドの方が効き目が強かった。更にキチンヘパリノイドにはヘパリンのような出血傾向を増大させる副作用がないことも確認された。

* 日本水産系の共和テクノスが、イカの「骨」やカニ殻に含まれる「キチン」という物質に動物のけがを治療し、植物の細菌に対する抗菌力を強化する性質があることに注目、商品化を進めている。

キチンはカニの殻(外骨格)に含まれ、1970年代に米国研究者が傷口を治す効果を指摘。日本ではユニチカが88年にカニから抽出したキチンを使った人工皮膚を発売した。共和テクノスが注目しているのが、スルメイカなどの骨にあたる「軟甲」に含まれているキチン。カニのキチンとは結晶の構造が異なり、スポンジ状やシート状に加工しやすいのが特徴という。

同社が調査を依頼した鳥取大学によると「動物について150の症例を集め、イカのキチンがけがの治療に効くことがほぼ実証された」という。

* 愛媛大学医学部の奥田拓道教授と広島女子大学の加藤秀夫教授は、食塩(塩化ナトリウム)による血圧上昇は食塩中のナトリウムが原因ではなく塩素であるという新しい証拠をつきとめた。食塩と同時に食物繊維のキトサンを摂取すると、塩素だけがキトサンに吸着され、排せつされ、その結果ヒトの血圧上昇を抑えることができた。

食塩と血圧上昇の因果関係は現在、食塩中のナトリウムが原因とする学説が主流となっており、ナトリウム摂取を削減したり、カリウムで置き換える食生活指導や医薬品成分の調整などが行われているが、塩素が原因だとすると、現在の対処法を全面的に見直す必要が出てきそうだ。

食塩が血圧上昇を引き起こすのは一般にナトリウムのためとされているが、確実なことは分かっていない。例えば食塩によって血圧は上がるが、塩化アンモニウムでは上がらないことからナトリウム原因説がいわれているが、実はこの説に対してはアンモニウムの毒性で体重が減少した結果血圧が下がったという見方がある。

また、食塩を多量にとっても血中のナトリウム量は変動しないという研究結果もあり、ナトリウム原因説否定の根拠となっている。

これに対し両教授は、食塩を摂取しながら塩素を排せつする作用がのある食物繊維のキトサンも同時に摂取し、血圧がどのように変化するかを調べた。

キトサンはナトリウムの7 倍の塩素を排せっする作用があり、塩素を排せつした後の血圧の状態を見ればナトリウムの影響を把握できるからだ。

健康人を対象にした実験で、約13グラムの食塩を含む辛い朝食を取ると、1時間後に血圧は上がり、3時間後には元に戻る変化が見られたが、食塩と同時に5gのキトサンを取ると血圧は変わらなかった。

血圧の変化は血液中の塩素量の変動と一致しており、ナトリウム量は一定だった。更にキトサンの摂取で、血圧上昇ペプチドを作る酵素のACEの活性上昇を抑えることも確かめた。

* 調味料メーカーの焼津水産化学工業と静岡県立大学の鈴木康夫教授らは、硫酸化したキチンオリゴ糖に炎症を抑える働きがあることを発見した。キチンオリゴ糖は食品に使われている物質で、安全で副作用の心配が少ない。ステロイド系に代わる次世代の抗炎症剤として医薬品分野に応用できると同社では見ている。

ラットにコブラ毒を注入すると肺に炎症を起こすが、このラットに硫酸化キチンオリゴ糖を投与したところ、投与しないラットに比べて「炎症の程度を30-40%に抑えることができた」という。

以上「キチン・キトサン」について各種報告が見られるが、現在、医薬品としては創傷被覆剤が上市されているのみである。

上市されている本品の多くは「健康食品」であり、その意味では医薬品の適応症に相当する効能・効果を標榜することは薬事法違反を問われるため、販売各社とも具体的な効果を標榜していない。また、副作用についても、健康食品であり、報告義務のないものであるため、詳細については不明である。

なお、健康食品として上市されている「キチン・キトサン」には、「キチン・キトサン」以外の物質を配合している製品もあり、詳細な調査が必要であるとすれば、摂取中の患者自身が購入している商品名・会社名を確認することが必要である。

[1996.6.24.古泉 秀夫] [1998.10.19. 一部修正]


  1. 四方田 千佳子:キチン・キトサンの製剤素材としての特性;Pharm Tech Japan,10(5):557-564(1994)
  2. 松永 亮:カニ殻パワー健康法;廣済堂出版,1996
  3. 伊藤 由雄・他:キチン・キトサン-その医療分野における研究動向-;Bio Industry,11(5):263-274(1994)
  4. キチン・キトサン-健康読本1;季刊 健康の科学 No.2,1995
  5. ヒノキやヨモギの抽出成分で-かゆみなどの症状軽減で 補助療法にも利用;毎日新聞,1994.8.16.
  6. 「カニ」の殻からがん転移予防薬-北大研究グループが開発-副作用少なく有望;東京新聞,1990.10.18.
  7. イカとカニ動植物救う-殻に含まれる「キチン」-共和テクノス商品化へ;読売新聞,1991.11.22.
  8. 食塩による血圧上昇の原因?ナトリウム説を否定-;日刊工業新聞,1994.10.25.
  9. 硫酸化キチンオリゴ糖-炎症を抑える働き-;日経産業新聞,1995.3.15.
  10. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:NHS.DI-News,No.1539,1997.5.19.収載

ギムネマ摂取により眼圧亢進は起こるか

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:副作用・健康食品・ギムネマ・ブカトウ・武靴藤・眼圧亢進・抗コリン作用

Q:ギムネマ摂取中の患者で眼圧亢進が見られるが、本品の摂取により眼圧亢進は起こるか

A:ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvesta)は、インド・アフリカに自生するガガイモ科の低木で、インド伝承医学アユルベーダの古典「スシュルータ本集」に肥満と大食を伴う病気の治療薬として記載されているの報告がされている。葉にギムネマ酸(gymnemic acid)というトリテルペン配糖体を含み、この成分は味覚のうち甘味だけを抑制するので、これを口に含んだ後は砂糖を舐めても砂のようにしか感じられないとされている。

また、ギムネマ酸には、腸管での糖吸収抑制作用や抗う蝕作用があるといわれ、糖尿病によいとされているが臨床的に有効かどうかの証明はされていない。

*Gymnema sylvesta(Retz.)Schult.、ブカトウ;武靴藤。ガガイモ科の植物。

  • 薬理]ラットに葉のアルコール抽出液を経口投与するか又は筋肉内注射すると、垂体前葉エキス、垂体成長ホルモンを抑制するか又は腎上腺皮質ホルモンの引き起こす高血糖を促す。

大阪府立大学農学部の中野 長久教授は、インドに自生するガガイモ科属の蔓性植物ギムネマシルベスタから抽出した糖アルコールの一種「コンズリトールA」が糖尿病予防などに有効であることをラットを使った実験で確認した。

ギムネマシルベスタは野生植物で、抽出されるギムネマ酸は甘味抑制作用、グルコース吸収抑制作用があることが知られている。同教授はギムネマシルベスタの葉を熱水中に入れて有効成分を抽出した後、その中に含まれるギムネマ酸を沈殿させ、残った水を活性炭、合成樹脂、クロマトグラフィーを使って分離・精製してコンズリトールAを得た。健康ラット12匹に同物質を混ぜたえさを与え、8週間後に比較した結果、体重は平均約320gと実験開始から140g程度増え、その期間の腸内グルコースの量が約100mg/dLと低い数値で、殆ど変わらないことが分かった。

また、糖尿病モデルラット12匹で同様の実験を行ったところ、混合えさを摂取させたラットの体重増加は約210gで、正常ラットに比べて生育スピードは落ちるものの、グルコース量が平均約300mg/dLとなり病状好転が見られた。一方、通常のえさを摂取したラットは体重が約145gから160gと生育が遅く、グルコース量も平均約500mg/dL程度と症状が顕著になった。

ギムネマシルベスタの葉は、肥満予防、糖尿病薬として用いられているが、ギムネマ酸を除いた抽出液については確認されていない。ペルー産の植物コンズランゴからコンズリトールA?Fまで6種類の物質が確認されているが、有効性など化学的な証明はされていなかった等の報告がされている。

現在、ギムネマシルベスタ中に含まれる成分の詳細については、情報の入手が困難である。

一方、薬剤性の眼圧亢進については、「抗コリン作用を有する薬剤では、散瞳とともに房水通路が狭くなり、眼圧が上昇し、症状を悪化させる」等の報告が見られる。本品の含有成分の詳細は不明であるため、副交感神経遮断作用を有する物質が存在するか否かは不明であるが、多様な成分の存在が想定されることからあるいは抗コリン作用を有する薬剤同様の機序により眼圧亢進が見られる可能性は否定できない。

従って、他に原因が求められない場合、本品の摂取を一時中断し、眼圧変化について、経過の観察をすることが必要である。

[065.GYM:2000.5.24.古泉秀夫]


  1. 社団法人山口県薬剤師会薬品情報センター:Drug View No.40,1990.8.25
  2. 上海科学技術出版社:中薬大辞典;小学館,1985
  3. 糖尿病に効く物質抽出-大阪府立大インド原産植物から-;日刊工業新聞,1991.9.26.
  4. 糖尿病に「ギムネマ・シルベスタ」;読売新聞,1987.5.21.[医薬品情報,17(7):613(1990)]
  5. パック入り細咲茶;読売新聞,1995.9
  6. 健康産業新聞;第851号,1996.11.7.
  7. 薬局新聞;No.2255,1996.5.22. 8)第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996

杏仁水中のアミグダリンによる相互作用

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:相互作用・ 漢方薬・キョウニン水・杏仁水・アミグダリン・マンデルニトリル

Q:杏仁水中のアミグダリンによる相互作用

A:杏仁水(Apricot Kernel Water)を定量するときシアン化水素(HCN:27.03)0.09?0.11w/v を含む。本品は無色?微黄色澄明の液で、ベンズアルデヒド様の臭い及び特異な味がある。pH:3.5?5.0。

本品の主成分であるマンデルニトリルmandelnitrile(ベンズアルデヒドシアンヒドリン benz-aldehydecyanhydrin)は、元来杏仁中に含まれているものではなく、杏仁中に2.5?3.5%含む青酸配糖体アミグダリン amygdalinが、杏仁蛋白中の酵素エムルシンemulsinの作用によって、水の存在下に分解して生ずるものである。

amygdalinが殆ど完全に分解されるには、細胞質中に均等に水が行き渡るように杏仁の脂肪油をよく除き、同時に細かく砕くことが必要である。amygdalinの分解は速いので、実際に行う場合、水とかき混ぜ、常温又は多少加温して少時放置するのがよい。少量の酸添加は分解を促進する。また杏仁は蛋白質の量が多いため、泡立ちを生じやすいから大きい蒸留器を用いて加熱を調節する。なお、製造に際しては、シアン化水素による中毒を十分注意しなければならない。水蒸気蒸留直後の留液中ではbenzaldehyde及びシアン化水素は各々遊離して存在するが、次第に両者は結合してmandelnitrileの形となり、製品では殆どこの状態で含有される。

杏仁は、ホンアンズ(Prunus armeniaca L.)、アンズ(P.armeniaca L.var.anzu Max.)の種子であり、青酸配糖体amygdalin約3%、脂肪油30?50%を含み、前者の含量は桃仁より高い。oleic acid、linoleic acid、palmitic acidをはじめtriglyceride、glycolipide、phospholipidを含むとされている。

以上の報告から杏仁中のamygdalinは、杏仁水製造中にmandelnitrileに変換するため、杏仁水中にamygdalin は存在しないか存在したとしても痕跡程度であることが推定されるため、amygdalinによる相互作用を考える必要はないものと判断する。

[015.2AMY:2000.6.19.古泉秀夫]


  1. 第十三改正日本薬局方解説書;広川書店,1996

キャッツクロウについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・キャッツクロー・猫の爪・Cat’s-claw・ウンカリアトメントサ ・抗酸化作用

Q:最近、健康食品としてキャッツクロウという言葉を耳にするが、これはどの様なものか

A:キャッツクロウ(猫の爪・Cat’s-claw)は、南米ペルーのジャングルで樹木に絡みながら伸びるアカネ科の蔓性の1年草で、学名:Uncaria Tomentosa(Willd.)DC.(ウンカリア・トメントサ)の樹皮を薬用として用いる。

名称の由来は小枝から出る葉柄の基部に、猫の爪のような形の鈎が突出していることによる。別名:Una de gate、Garbato amarillo。使用部位は樹皮、葉。

ペルーの先住民であるインディオは、蔓を切ったときに溢れ出てくる樹液を服むことで消化器系や免疫系の疾患に用いたとされるの報告が見られる。

1974年に抗腫瘍性物質の存在を発見、同年代に抗炎症作用があることも確認された。1990年キャッツクロウの根から6種類のoxyindolalkaloidを抽出、mitraphyllia、rhyncophylline及び次の4種類(キャッツクロウに特有で活性の高いisoputeropodine(イソプテロポジン)、pteropodine(プテロポジン)、isomitraphydine(イソミトラフィジン)、isorhyncophylline(イソリンコフィリン)が、白血球の貪食作用を著しく活性化することを明らかにした。

その他、抗酸化性、抗微生物性、抗炎症性、抗腫瘍性等を持つ成分の存在が明らかにされている。

その他、トリテルペノイドのguinovic acid glycoside(消炎活性・抗ウイルス作用)、ステロールのβ-sitosterol、stigmasterol、campesterol等が含まれている。

現在、ペルーの農業省が公表しているキャッツクロウに関する資料(1996年3月)によれば、キャッツクロウの樹皮の熱水煎出・アルコール抽出成分は、気管支喘息、気管支炎、関節炎、リウマチ、肺・頸部癌、ヘルペス(疱疹)、胃腸障害(潰瘍性胃炎・腸炎)、膵臓炎、肝炎、痔疾等に対する効能があるとしている。

『樹皮に含まれるアルカロイドは、免疫組織を刺激して抵抗力を増進させ、自然治癒力を活性化させる。また、 polyphenol類のcatechinやanthocyanidinは潰瘍抑制効果を発揮する。その他、アレルギー抑制効果、胃・肝臓の保護作用、膵臓・子宮の調整効果も種々の実験で証明されている』とする報告が見られる。

1994年WHOで、副作用のない抗炎症薬として承認されたの報告も見られる。

同じくUna de gateと呼ばれている同属のUncaria guianensisがあるが、これもキャッツクロウと同様の効果を示すことが報告されている。

具体的作用としては、リウマチ改善、抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫力改善・増強が報告されている。

いずれにしろ上記報告を見る限り、キャッツクロウは、単なる健康食品とするよりは、生薬の範疇に含めるべきものではないかと考える。従って、薬物療法中の患者では、その喫食について、主治医の判断を求めることが無難であるといえる。

[015.9CAT:2000.8.1.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001
  2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  3. キャッツクロウ資料,有限会社ワーカービーWK [東京都江戸川区松島1-41-22]
  4. 薬用ハーブの機能研究;健康産業新聞社,1999

ギムネマと糖尿病治療薬の併用

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:相互作用・糖尿病薬・経口糖尿病薬・ギムネマ・ブカトウ・薬効・薬理

Q:インドの秘茶「ギムネマ100」という製品を糖尿病患者が服用している。糖尿病薬との間に何等かの影響はあるか。

A:ギムネマ・シルベスタ(Gymnema sylvesta)は、インド・アフリカに自生するガガイモ科の低木で、インド伝承医学アユルベーダの古典「スシュルータ本集」に肥満と大食を伴う病気の治療薬として記載されている。

葉にギムネマ酸(gymnemic acid)というトリテルペン配糖体を含み、この成分は味覚のうち甘味だけを抑制するので、これを口に含んだ後は砂糖を舐めても砂のようにしか感じられないとされている。

その他、ギムネマ酸には、腸管での糖吸収抑制作用や抗う蝕作用があるといわれ、糖尿病によいとされているが臨床的に有効かどうかの証明はされていない。

*Gymnema sylvesta(Retz.)Schult.、ブカトウ;武靴藤。ガガイモ科の植物。

[薬理]ラットに葉のアルコール抽出液を経口投与するか又は筋肉内注射すると、垂体前葉エキス、垂体成長ホルモンを抑制するか又は腎上腺皮質ホルモンの引き起こす高血糖を促す。

その他、ギムネマについて、次の報告がされている。

大阪府立大学農学部の中野 長久教授は、インドに自生するガガイモ科属の蔓性植物ギムネマシルベスタから抽出した糖アルコールの一種「コンズリトールA」が糖尿病予防などに有効であることをラットを使った実験で確認した。

ギムネマシルベスタは野生植物で、抽出されるギムネマ酸は甘味抑制作用、グルコース吸収抑制作用があることが知られている。

同教授はギムネマシルベスタの葉を熱水中に入れて有効成分を抽出した後、その中に含まれるギムネマ酸を沈殿させ、残った水を活性炭、合成樹脂、クロマトグラフィーを使って分離・精製してコンズリトールAを得た。

健康ラット12匹に同物質を混ぜたえさを与え、8週間後に比較した結果、体重は平均約 320gと実験開始から140g程度増え、その期間の腸内グルコースの量が約100mg/dLと低い数値で、殆ど変わらないことが分かった。

また、糖尿病モデルラット12匹で同様の実験を行ったところ、混合えさを摂取させたラットの体重増加は約210g で、正常ラットに比べて生育スピードは落ちるものの、グルコース量が平均約300mg/dLとなり病状好転が見られた。

一方、通常のえさを摂取したラットは体重が約145gから160gと生育が遅く、グルコース量も平均約500mg/dL程度と症状が顕著になった。

ギムネマシルベスタの葉は、肥満予防、糖尿病薬として用いられているが、ギムネマ酸を除いた抽出液については確認されていない。ペルー産の植物コンズランゴからコンズリトールA?Fまで6種類の物質が確認されているが、有効性など化学的な証明はされていなかった。

同教授は、ギムネマ酸以上に活性がある上、無毒で生育にも影響が無く、血糖値を抑えるグルコース吸収抑制作用があるため、医薬の他食品などへの利用も可能としている。

以上の報告から、伝承療法として、糖尿病治療に使用されていること及びグルコース吸収抑制作用のある物質が成分として含まれていること等から、糖尿病治療薬との間に全く影響が無いとは考えられないが、通常、お茶として飲用される程度の量で糖尿病治療薬の作用を増強するとは考えられない。

従って、大量に飲用しないよう患者注意し、飲用について主治医に連絡するよう指導されたい。

*ギムネマ100(三上商店;東京都世田谷区奥沢1-6-6

インドでダルマール=シュガーデストロイヤー(糖を壊すもの)とも呼ばれ、糖分の吸収を抑えるようで、飲んだ後は、甘味を感じなくなる不思議な健康飲料1Lの水に1?2袋(2.5?5g)入れ、5分程度煮出してください。また、急須に熱湯を注ぎ、1?2分して飲んで下さい

*ぐるまーる(ナチュラルプロダクツ;TEL.03-0320-9989)

ギムネマ・シルベスタを錠剤化したもの。

*細咲茶[さいさいちゃ](サントリー株式会社;TEL.03-3470-1132]

紙パック入り無糖茶飲料、ギムネマ葉エキス+ほうじ茶ブレンド。200mL入り。

*ギムネマシルベスタ・スリム(AFCファミリークラブ;TEL.0120-464981)

ギムネマ酸(サポニン)、ビフィズス菌、柑橘系ダイエタリーファイバー等をブレンド。粒剤。

*ギムネマシルベスタ・スリム(AFCファミリークラブ;TEL.0120-464981)

ギムネマ酸(サポニン)、ビフィズス菌、柑橘系ダイエタリーファイバー等をブレンド。粒剤。

*マカイバリダイアティー(サーカーズオフィスインク;TEL.03-5371-4644)

ギムネマシルベスタ、ターミナリア、トゥゴネラの3種のハーブをブレンド。ギムネマシルベスタは糖尿病に、ターミナリアは強心や解毒。トゥゴネラは慢性胃炎、利尿及び泌尿器系への作用で知られている。

*コラーゲンスリム茶(山本漢方製薬(株);TEL.0568-77-2211)

水溶性コラーゲン(水溶性粉末)にギムネマ・シルベスタ、オオバコ種皮、キダチアロエ等12種類のダイエット素材配合。

*スーパーダイエットV(株式会社マーキュリー;TEL.0425-61-6511)

1粒中にコミフォラムクル(グッグルエキス)35mg・ギムネマシルベスタエキ ス90mg・グルコマンナン30mg・大豆抽出物(α-アミラーゼインヒビター)6mg 配合。

*天然健草茶(株式会社サイノス;TEL.0120-24-3726)

ギムネマ、キダチアロエ、カキ葉の他ビタミン、ミネラル9種類入りの天然健康茶

[1996.6.11.古泉秀夫]


  1. 社団法人山口県薬剤師会薬品情報センター:DrugView No.40,1990.8.25
  2. 上海科学技術出版社:中薬大辞典;小学館,1985
  3. 糖尿病に効く物質抽出-大阪府立大インド原産植物から-;日刊工業新聞,1991.9.26.
  4. 糖尿病に「ギムネマ・シルベスタ」;読売新聞,1987.5.21.[医薬品情報,17(7):613(1990)]
  5. パック入り細咲茶;読売新聞,1995.9
  6. 健康産業新聞;第851号,1996.11.7. 7)薬局新聞;No.2255,1996.5.22.

強化グロスミンについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:薬名検索・強化グロスミン顆粒・健康食品・クロレラエキス

Q:強化グロスミン顆粒の効能及び副作用について

A:強化グロスミン顆粒(Grosmin)[〒105クロレラ工業株式会社;東京都港区芝大門2丁目4番6号豊国ビルTEL.03-3437-0901]は、クロレラ工業株式会社が独特の種株を用いて生産する筑後産クロレラ中の最高品質グロスミンに、独自の方法で<筑後産クロレラ>から抽出した保健効果上有効な<クロレラエキス(CVE)>を更に強化した顆粒状の健康食品である。

強化グロスミン顆粒は、グロスミンに更にクロレラエキスを3:1の割合で強化したもので、保健効果と栄養補給効果との両面から強力に健康を維持するとされている。

<筑後産クロレラ>から抽出したクロレラエキスは、糖蛋白、多糖体、核酸関連物質などが含まれており、これらは健康を維持していく上で、非常に大切な成分であることが解っていると報告されている。

<強化グロスミン顆粒>には、ビタミン、ミネラルが天然のままに、しかもバランスよく含まれており、ビタミンは17種類、ミネラルは14種類、植物線維4種類、葉緑素2種類が含まれている。

含有成分の量は、同社発売のグロスミンの3/4程度とされている。

カロチン エルゴステロール ビオチン
ビタミンB1 ビタミンE コリン
ビタミンB2 ビタミンK1 イノシトール
ビタミンB6 ナイアシン コエンザイムQ9
ビタミンB12 パントテン酸  
ビタミンC 葉酸  

その他、必須脂肪酸としてリノール酸・リノレン酸の存在が報告されている。

カルシウム モリブデン
ナトリウム セレン
マグネシウム 亜鉛
カリウム クロム 硫黄
マンガン コバルト  
含有植物線維 含有葉緑素
水溶性難消化性多糖類 クロロフィルa
ヘミセルロース クロロフィルb
セルロース  
リグニン  

本品の原材料としてクロレラ、クロレラエキス、植物性クリーミングパウダー、還元麦芽糖、ビタミンC、骨カルシウム、レモン香料、糊料(プルラン)、甘味料(ステビア)が報告されている。

本品はJHFA(日本健康食品協会)認定商品である。

本品は医薬品ではないため、副作用の記載はされていないが、クロレラについては、発疹等の含有成分に起因する副作用が報告されており、注意が必要である。

[1994.1.11.・1999.3.19.一部改訂古泉秀夫]


  1. クロレラ工業株式会社・私信,1994
  2. 強化グロスミン顆粒パンフレット
  3. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.832,1994.6.23

眼科用キシロカイン液の使用期限

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:物理・化学的性状・安定性・眼科用キシロカイン液・使用期限・lidocaine hydrochloride・細菌汚染

Q:眼科処置室における4%-キシロカイン眼科用の使用期限をどの様に考えるか。保存条件は下記の通りである。

保存条件:診療時間中は点眼液セット(フタ付プラスチック性気密容器)中に入り、他の点眼液等と一緒に常温で点眼液セット内に保存。診療終了後は、保冷庫に保存。

A:眼科用キシロカイン液(アストラゼネカ-ニプロファーマ)の組成・性状は下記の通りである。

販売名 眼科用キシロカイン液
成分・含量(1mL中) lidocaine hydrochloride 40mg
添加物 クロロブタノール、pH調整剤
剤型 点眼剤
色調・形状 無色澄明な無菌の液
pH 5.0-7.0
使用期限 製造後3年
貯法 遮光し、凍結を避けて15℃以下に保存。
性状 リドカインは白色-微黄色の結晶又は結晶性の粉末である。メタノール又はエタノール(95)に極めて溶け易く、酢酸(100)又はジエチルエーテルに溶け易く、水に殆ど溶けない。希塩酸に溶ける。
取扱い上の注意
  1. 1.クロロブタノール(保存剤)は冷時安定であるが、加熱滅菌により分解して塩酸を放出し、液に刺激性を与える懸念があるので、本剤は無菌操作法により調製されている。したがって、本剤を加熱再滅菌して使用したり、また、稀釈して加熱滅菌の上用いることは絶対にしないこと。
  2. 塩酸リドカインは金属を侵す性質があるので、長時間金属器具(カニューレ、注射針等)に接触させないことが望ましい。なお、金属器具を使用した場合は、使用後十分に水洗すること。
20mL,100mL。

点眼液は本来無菌的に調製された製剤であり、製剤の使用期限を検討する場合、『製剤的安定性』、『使用環境』、『保管環境』の他、『微生物汚染』に関する注意が必要である。特に“フタ付プラスチック性気密容器”に充填し、スポイトを利用した点眼方法を行っている場合、患者の眼瞼に接触したスポイトが点眼容器内に戻されることにより、点眼液が細菌に汚染され、他の患者に感染が蔓延するという事例が見られた。

眼科用キシロカイン液の製剤の安定性については

  1. 室内散光下:無色透明、ガラス瓶、密栓3ヵ月保存→pHやや低下、他の項目に殆ど変化を認めない。
  2. 室温:無色透明、ガラス瓶、密栓24ヵ月保存→pH規格以下(規格pH:5.0-7.0)となる。他の項目は殆ど変化を認めない。
  3. 15℃ 保存:無色透明、ガラス瓶、密栓48ヵ月保存→各項目殆ど変化を認めない。

通常、処置室で使用される製剤は、1)あるいは2)の条件で使用されると考えられるが、製剤上の安定性については特に問題になるとはいえない。従って細菌汚染の問題を検討課題として判断することが必要ではないかと考えられる。

以前、眼科外来の看護師から処置瓶に白色の架絮物が浮遊しているという申し出があり、処置室における取扱いについて検討した結果、本剤は処置用薬であることから保存期間は1ヵ月以内とし、交換は毎月第1月曜日とする。

なお、払い出しの規格については、市販品をそのまま払い出すのではなく、無菌調製法により1本5mLの点眼容器に分割して交付することとした事例がある。

[014.4.LID:2005.3.22.古泉秀夫]


  1. 眼科用キシロカイン液添付文書,2003.11.
  2. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(7):698-699(1999)

カイロイノシトールについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・機能性成分・カイロイノシトール・chiro-inositol・イノシトール・inositol・イノシット・inosit・血糖降下作用

Q:カイロイノシトールについて

A:イノシトール(inositol)について、次の報告がされている。

別名:イノシット(inosit)

概要:inositolは分子式C6H12O6 =180.16。Hexahydroxy cyclohexaneあるいはcyclohexitolで、9種類の立体異性体が存在し、そのうち8種が見出されている。

本品はその中のmeso- inositol又はmyo-inositolと呼ばれるもので、この二つのみが生物活性を持っていると報告されている。

その生合成は酵母の場合、グルコース6-リン酸が酵素シラーゼによってイノシトール1-リン酸になり、更に特異的なphosphatase作用でinositolになる。

動物体内での inositolはmeso-inositoloxycgenaseによってC-1とC-6の間が酸化的に開裂しグルクロン酸となる。この酵素は高等動物では腎臓に局在する。

inositolはビタミンB群の一種として脂肪肝・動脈硬化予防、カルシウム吸収促進、コレステロール血症改善等の作用がある。また乳児の必須ビタミンとして粉ミルクにも使用されている。

  • [薬効]inositol欠乏によりマウス、ラットは成長遅延、脱毛などの欠損症状を示すが、原因としてinositol摂取の不足と inositolの体内合成抑制の二つがあげられている。
    ヒトにおけるinositol欠乏症は未確認である。従ってinositolが必須栄養素であるか否かはにわかに断定できないとされている。
    inositolは脂肪、コレステロールの代謝に重要な役割を努め、抗脂肝作用を現し、脂肪肝、肝硬変、過コレステロール血症などに有効とされ、またコレステロールとリン脂質の比を調節して、動脈硬化症に奏効するとする報告が見られる。しかし、inositol の生理作用、作用機序、代謝などについては未詳の部分も多い。
  • [適用]脂肪肝、肝硬変、過コレステロール血症、動脈硬化症等

1日0.5-2g、時に1日3g以上内服。

なお、inositolの異性体の慣用名について、次の報告がされている。

cis-イノシトール cis-Inositol epi-イノシトール epi-Inositol
allo-イノシトール allo-Inositol myo-イノシトール myo-Inositol
muco-イノシトール muco-Inositol neo-イノシトール neo-Inositol
chiro-イノシトール chiro-Inositol scyllo-イノシトール scyllo-Inositol

chiro-inositolについては、蕎麦中の含有量が高いとする報告及び血糖値を低下させるとする報告がされている。

蕎麦(Fagopyrum esculentum Moench(Buckwheat)。浄腸草(ジョウチョウソウ)、鹿蹄草(ロクテイソウ)、流注草(ルチュウソウ)。

  • 基原]:蕎麦はタデ科の1年生本草である。蕎麦(和名:ソバ)、中国雲南省が原産地とするのが定説である。
  • 漢名:キョウバク(蕎麦)。
  • 異名]:曽波(ソバ)、烏麦(ウバク)、?麦(キョウバク)、花蕎(カキョウ)、甜蕎(テンキョウ)、蕎子(キョウシ)。
  • 薬用部分]:種子・茎葉。
  • 成分]:痩果にサリチルアミン、4-ヒドロキシベンジルアミン、N-サリチリデン-サリチルアミン含有。蕎麦?(キョウバッカク):蕎麦の茎と葉。
  • 成分]全草にはルチン、クエルセチン、カフェー酸を含む。また光に敏感な物質も含む。種子と苗はオリエンチン、ホモオリエンチン、ビテキシン、サポナレチン、ルチン、クエルセチン、シアニジン、ロイコアントシアニンなどのフラボノイドを含む。
  • [薬効]:はれもの、洗濯・洗髪(茎葉を焼き、灰を水につけて灰汁を作って使用)

蕎麦中に含まれるchiro-inositolの機能について、動物実験の結果として血糖降下作用が報告されているが、動物実験の結果を直ちにヒトに外挿することはできない。また、漢方薬としての使用では、蕎麦の血糖降下作用を期待するものは見られていない。

[015.9.CHI:2005.9.6.古泉秀夫]


  1. 14303の化学商品;化学工業日報社,2003
  2. 第8改正日本薬局方解説書;廣川書店,1971
  3. http://homepage1.nifty.com/nomenclator/text/cyclitol.htm,2005.8.22.
  4. http://www.supplenews.com/MT/,2005.8.22.
  5. http://www.supplenews.com/MT/archives/2005/04/post_301.html,2005.8.22.
  6. 伊澤一男:薬草カラー大事典;主婦の友社,1998
  7. 上海科学技術出版・編:中薬大辞典 第1巻;小学館,1998

カシスについて

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・カシス・Cassis・クロフサスグリ・黒房スグリ・blaack currant・ブラックカーラント・黒スグリ・黒カリン

Q:健康食品として紹介されているカシスとはどの様なものか

A:カシスは、ユキノシタ科スグリ属フサスグリ亜種に属する耐寒性落葉小低木である。原産地はヨーロッパ-アジア。

学名:Ribes nigrum cv.

英名:blaack currant(ブラックカーラント)

和名:クロフサスグリ、黒房スグリ、黒カリン。

属名のRibes(リビス)はアラビア語あるいはペルシャ語の「酸味のある」に因むとされる。和名のスグリについても「酸塊」に由来するとされる。

なお、一般にいわれているカシス(Cassis)はフランス語の呼称であるとされる。その他和名別名として「黒スグリ」とする報告も見られる。英名別名:クインシーベリー。また、本品はRibes nigrumを基に改良された品種群であるとされる。

Cassisは高さ2m程度の落葉の低木で、寒冷地に生育し6-8月に黒熟した果実を付ける。果実は房毎摘み取り食用に利用する。果実は直径は 1cm弱の球形の液果で、果肉は紫紺色で、酸味が強く、芳香がある。葉は飲用する。

果実は生食には不適であるが、カリウム、vitamin Cが豊富で、ジュース、ジャム、果実酒として利用され、タンニンを含有する葉は収斂消炎作用がいわれており、下痢、風邪などの時に茶剤として飲用するの報告が見られる。

日本では、カシスは青森県青森市の特産品になっているの報告も見られる。

  • 成分:葉は揮発油、タンニンとvitamin Cを含有。漿果はアントシアニン配糖体(約 0.3%)、フラボノイド、ペクチン、タンニン、vitamin C、カリウムを含んでいる。
  • 効力:ヨーロッパでは利尿効果が利用される。体液の排出によって血液の体積を減少させ、血圧の降下を図る。喉頭炎と口腔潰瘍の含嗽剤としても使用される。
  • 葉:止瀉作用、抗炎症作用。
  • 果実:眼精疲労改善作用、視覚機能改善作用、血流改善作用、抗ウイルス作用。

Cassispolyphenol(カシスポリフェノール)として4種類のanthocyanin(アントシアニン)の存在がいわれている。

Delphinidin-3-rutinoside(デルフィニジン-3-ルチノシド)、Delphinidin-3-glucoside(デルフィニジン-3-グルコシド)、Cyanidin-3-rutinoside(シアニジン-3-ルチノシド)、Cyanidin-3- glucoside(シアニジン-3-グルコシド)の4種類である。

anthocyaninは水溶性の色素であり、アルコールとの組み合わせで吸収率が上昇する。anthocyaninの生体内での作用として

  • 眼の機能向上:cyanidin rutinosideは他の植物に含まれることの少ないblaack currant特有のanthocyaninである。in vitroの試験においてcyanidin rutinosideには眼球内網膜に存在する視覚物質の一つロドプシンの再合成を促進させる機能があることが認められており、暗順応の改善、夜間視力の改善等の効果が期待できるとされている。その他、眼の網膜にある色素ロドプシンが分解と再合成を繰り返して光の刺激を脳に伝達することによりものが見えるが、anthocyaninはロドプシンの再合成を活性化する働きを示す。これにより暗順応など、anthocyaninは眼の機能向上に効果があるといわれている。また糖尿病性の眼底網膜病変の改善、眼精疲労の回復にも、臨床試験で効果が認められているとする報告も見られる。
  • 肝臓の機能向上:anthocyaninは肝臓の機能の回復、機能の向上に働くと考えられている。
  • 血圧降下作用:anthocyaninは血圧を上昇させる酵素の働きを阻害することが、最近の研究で明らかになってきている。その他、血中の血小板の凝固抑制作用、靱帯の腱の強化作用が確認されている。
  • その他、anthocyaninには抗酸化作用もあることから生活習慣病への効果も期待されている。

[015.9.CAS:2005.6.17.古泉秀夫]


  1. 阿部 誠・他監修:ハーブスパイス館;小学館,2000
  2. http: //www.meiji.co.jp/etc/dictionary/sp/cassis/about_cassis/guidance1_1.html,2005.6.17.
  3. 難波恒雄・監訳:世界薬用植物百科事典;誠文堂新光社,2000
  4. 大庭理一郎・他編著:アントシアニン-食品の色と健康-;建帛社,2000
  5. http://www.meijifm.co.jp/foodmat/c_cassis_use.html,2005.6.17.
  6. 中村丁次・監修:最新版からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001
  7. 薬用ハーブの機能研究 増補改訂版;CMPジャパン株式会社,2004

カモガヤ茶について

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:健康食品・機能性食品・花粉症・カモガヤ茶・カモガヤ・鴨茅・オーチャードグラス・Orchard grass・ホメオパシー・homeopathy

Q:友人がカモガヤ茶を飲むよう勧められたというが、期待される効果はどの様なものか

A:カモガヤ(学名:Dactylis glomerata L.)は、イネ科カモガヤ属に属する外来種の多年草である。

和名:鴨茅。

明治13年頃、牧草として米国から渡来、現在は逃出して雑草化している帰化植物である。

ヨーロッパ、西アジア原産。

また、鴨茅は、国内におけるイネ科花粉症の主たる原因植物とされる。

茎は多数直立し、高さ1m内外。葉は互生、広線形、質は荒く硬い。葉鞘の大半は筒で表面はざらつく。5-6月頃、茎の頂に長さ50cm内外の円錐花序をだし、多数の集合した小穂を付ける。

小穂は3-4個の花。

別名:オーチャード・グラス(Orchard grass)。

俗名:Cock’s foot grassのCock(雄鶏)をDuck(鴨)と見間違えたとされている。

鴨茅の花粉は、杉・檜木との比較では飛散する距離が数十メートルと短いため、多くの人々に症状は出ないが、症状の酷さは杉・檜木の10倍程度とする報告がされている。

その他、鴨茅の花粉が抗原となり、気管支喘息の発作が誘発されることがある。

この花粉(抗原)の侵入を切っ掛けとして免疫グロブリンE (IgE)抗体が産生される。ヒトによっては同一抗原が繰返し侵入すると、IgE抗体が異常に増え、これが免疫細胞の一つである肥満細胞に結合する。ここに再度同じ抗原が侵入すると、既に肥満細胞と結びついたIgE抗体に更に抗原が結合し、その刺激で肥満細胞からヒスタミンなどの物質が流れ出し、喘息発作が誘発される。

カモガヤ茶の飲用は、カモガヤの成分を体内に取り込むことによって抗原抗体反応を抑制する効果を期待したものであると考えられる。いわゆる減感作療法としてではなく、『同種療法・類似療法』といわれるホメオパシー(homeopathy)に近い考え方ではないかと思われる。

ただし、万人に100%有効な治療法は存在しない。従ってカモガヤ茶の飲用が、必ずしも効果を保証するわけではないが、治療の趣意からして、一定期間、飲用を継続することが必要ではないかと思われる。

[015.9.DAC:2005.5.26.古泉秀夫]


  1. 牧野富太郎:原色牧野日本植物図鑑 I:北隆館,2003
  2. 伊澤凡人・他編著:カラー版薬草図鑑;社団法人家の光協会,1999

カルシウム拮抗剤という名称について

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:語彙解釈・カルシウム拮抗剤・calcium antagonist・カルシウムチャネルブロッカー・calcium channel bloker・カルシウム流入阻害剤・calcium entry inhibitor・分類名・高血圧・狭心症治療剤

Q:カルシウム拮抗剤とする薬効分類名が使用されている。これだとカルシウムの作用を直接抑制する意味に聞こえるがどうしてその様な命名になったのか

A:カルシウム拮抗剤は、日本標準商品分類では『872171』に分類されている。

『217』は血管拡張剤であり『1』は冠血管拡張剤である。また、添付文書上の分類標記は『高血圧・狭心症治療剤(Ca拮抗剤)』とされている。

カルシウム拮抗薬として[英]calcium antagonist及び[独]Calcium antagonistとする標記も見られるが、カルシウムチャネルブロッカー(calcium channel bloker)、カルシウム流入阻害剤(calcium entry inhibitor)とする標記も見られる。

本剤は『カルシウム拮抗薬』といわれているが、Caと直接拮抗するという意味ではなく、Ca2+ の細胞内への流入を阻害する薬物を指しており、その意味で『カルシウムイオン流入阻害剤』等の分類名が適当ではないかと考えられるが、実際には『カルシウム拮抗剤』と略記されている。

略記された経緯については、該当する資料が検索できなかったため不明であるが、標記を短縮するということで記載され始めたものが、定着したのではないかと考えられる。

[615.8.CAL:2005.1.24.古泉秀夫]


  1. アダラート添付文書,2002.9.
  2. 保険薬事典-薬効別薬価基準;じほう,2003.
  3. PDR 57Ed.,2003
  4. 医学大辞典;南山堂,1992

覚せい剤の隠語について

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:語彙解釈・隠語・覚せい剤・塩酸メタンフェタミン・methamphetamine hydrochloride・ヒロポン・アンフェタミン・amphetamine・ゼドリン・特攻錠・猫目錠・シャブ・スピード・S・アイス・やせ薬

Q:覚せい剤に関係する隠語について

A:我が国における本格的な薬物乱用問題の発生は、敗戦による社会的、精神的影響を背景とした、社会情勢に起因する。

戦争中、覚せい剤は意識を高揚させ、恐怖感を取り除く薬として、特攻隊の飛行士に用いられたり、眠気を取り除き、集中力を増進させる薬として、軍需産業の労働者に与えられたりしていた。

そのため『特攻錠』、『猫目錠』とも呼ばれていた。我が国における覚せい剤乱用の歴史的経過は、戦後の第一次覚せい剤乱用時代から、現在、突入したのではないかとされる第三次覚せい剤乱用時代に区分されて語られている。

我が国における薬物乱用は、1946年(昭和21年)-1954年(昭和29年)の『第一次覚せい剤乱用時代』に始まるといわれている。旧軍部及び製薬会社が保有していた覚せい剤が、普通薬扱いされていたこともあって、一挙に売り出され、未曾有の乱用が見られた。一般人のみならず、作家や文化人といわれる人々が使用していたのが一つの特徴としてあげられている。

これに対し1949年(昭和24年)劇薬指定、1950年(昭和25年)要指示薬の指定、1951年(昭和26年)覚せい剤取締法が施行された。『第一次覚せい剤乱用時代』の乱用薬物は『ポン中』と呼称されたように塩酸メタンフェタミン(methamphetamine hydrochloride)である。

覚せい剤:『ヒロポン[methamphetamine hydrochloride](大日本)』、『ゼドリン[amphetamine](武田)』。『ヒロポン』の商品名はギリシャの勤勉を司る神の名ヒロポノスに由来する。

覚せい剤は1970年頃(昭和45年)から『第二次覚せい剤乱用時代』と呼ばれるような広がりを見せ、1981年(昭和56年)に入り覚せい剤中毒による検挙者は20,000人を突破、更に1990年(平成2年)の検挙者数は15,000人強となっている。この時期の特徴は、長距離トラックの運転手やタクシーの運転手、夜間に働く一部の職種の人達の間に乱用が広がったことにある。

この時期覚せい剤は、ヒトの骨までしゃぶる、財産や命までことごとく奪うということで、『シャブ』の呼称で呼ばれていた。

1995 年(平成7年)頃から『第三次覚せい剤乱用時代』の到来といわれる状況が見られる。平成9年における覚せい剤事犯の検挙者数は三年連続で増加し、速報値で 19,937人と年間2万人台の大台に肉迫した。

昭和55年から63年までの前回の乱用期においては、検挙者数は2万人台を超える水準で推移していたが、平成に入って1万人台の半ばとなり、また、ピーク時には11%を超えた未成年者比率は5%台へと半減していた。

これらの指標が平成7年以降増加に転じ、特に高校生の検挙者数が平成7年、8年と二年連続して倍増、9年には中学生が倍増と、中高生の検挙者数は前回の乱用期を大きく上回るに至った。

その内容を見ると、不良来日外国人の密売人組織が携帯電話を使い街頭で無差別に覚せい剤を販売し、これを中・高校生が好奇心やファッション感覚で購入し使用するといった事例が目立っている。

今回の乱用期においては覚せい剤の乱用が、暴力団関係者やその周辺の一部に限らず、普通の学生・生徒や一般市民の日常生活の間近に忍び寄る傾向が一段と鮮明に現れてきたという質的変化が顕著である。

このような新規乱用薬物の増加が、従来より根絶しきれないでいる常習者層による再犯に加わって、2万人台に迫る検挙者という今日の事態を引き起こしたものである。

これらを踏まえると、現下の薬物乱用状況は、昭和29年に最高5万5千人を記録した第一次乱用期、昭和59年に最高2万4千人を記録した第二次乱用期に続く、戦後第三回目の覚せい剤乱用期に突入したものと認められる。

現段階の特徴は、覚せい剤に『スピード』(効果速度からの命名)、『S』(スピードの頭文字)、『アイス』(覚せい剤の結晶型)、『やせ薬』等の通称が付けられていることである。

『第一次覚せい剤乱用時代』は序章から終章までが明確に区分されているが、『第二次覚せい剤乱用時代』から『第三次覚せい剤乱用時代』は、雪崩れ込み現象に似た推移が報告されている。

[615.8.MET:2004.6.22.古泉秀夫]


  1. 宮里勝政:薬物依存;岩波新書(新赤版),1999
  2. 中村希明:薬物依存-ドラッグでつづる文化風俗史;講談社ブルーバックス,1993
  3. http://www.dapc.or.jp/info/5kanen/5-3.htm,2004.6.20.
  4. 水谷 修:薬物乱用-いま、何を、どう伝えるか-;代修館書店,2001

感染症の分類-重要な感染症』

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:滅菌・消毒・感染症・感染症分類・一類感染症・二類感染症・三類感染症・四類感染症・五類感染症

Q:重要な感染症について、表にまとめたものはあるか。

A:重要な感染症の『重要な』は、取り方によって異なると考えられる。感染症としての『重症度』なのか、あるいは『院内感染』としての重要度なのか、『有効な治療薬がない感染症』であるために重要なのか等である。しかし、取り敢えずということで、我が国において法律に基づいて分類されている感染症を表示してあるので、それを紹介する。

一類感染症 エボラ出血熱、クリミア・コ ンゴ出血熱、

ペスト

マールブルグ病

ラッサ熱

重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る。)

痘そう(天然痘)

■感染力、罹患した場合の重篤性から判断して、危険性が極めて高い感染症。
二類感染症 急性灰白髄炎コレラ

細菌性赤痢

ジフテリア

腸チフス

パラチフス

■感染力、罹患した場合の重篤性から判断して、危険性が高い感染症。
三類感染症 腸管出血性大腸菌感染症 ■感染力、罹患した場合の重篤性から判断して、危険性は高くないが、特定の職業への就業によって 集団発生を起こしうる感染症。
四類感染症 ウエストナイル熱エキノ コックス症

黄熱

オウム病

回帰熱

Q熱

狂犬病

コクシジオイデス症

腎症候性出血熱

炭疽

つつが虫病

デング熱

日本紅斑熱

日本脳炎

ハンタウイルス肺症候群

Bウイルス病

ブルセラ症

発しんチフス

マラリア

ライム病

レジオネラ症

A型肝炎

E型肝炎

高病原性鳥インフルエンザ

サル痘

ニパウイルス感染症

野兎病

リッサウイルス感染症

レプトスピラ症

ボツリヌス症(乳児ボツリヌス症を変更)

■既に知られている感染性の疾病であって、動物等の物件を介して人に感染し、国民の健康 に影響を与えるおそれがあるものとして政令で定める感染症。
五類感染症 (全数把握)アメーバ赤痢ウイルス性肝炎(A型肝炎及びE型肝炎を除く)

急性脳炎(ウエストナイル脳炎及び日本脳炎を除く)

クリプトスポリジウム症

クロイツフェルト・ヤコブ 病

劇症型溶血レンサ球菌感染症

後天性免疫不全症候群

ジアルジア症

髄膜炎菌性髄膜炎

先天性風しん症候群

梅毒

破傷風

バンコマイシン耐性黄色ブ ドウ球菌感染症及び

バンコマイシン耐性腸球菌感染症

(定点)RSウイルス感染症

咽頭結膜熱

インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く)

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

感染性胃腸炎

急性出血性結膜炎

クラミジア肺炎(オウム病を除く)

細菌性髄膜炎

水痘

性器クラミジア感染症

性器ヘルペスウイルス感染症

尖圭コンジローマ(尖形コンジロームから変更)

成人麻しん

手足口病

伝染性紅斑

突発性発しん

百日咳

風しん

ペニシリン耐性 肺炎球菌感染症

ヘルパンギーナ

マイコプラズマ肺炎

麻しん(成人麻しんを除く)

無菌性髄膜炎

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症

薬剤耐性緑膿菌感染症

流行性角膜炎

流行性耳下腺炎

淋菌感染症

■国が感染症発生動向調査を行い、その結果などに基づいて必要な情報を一般国民や医療関 係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症

上表には、病院内感染で難治性の感染症を惹起する細菌の一部は記載されていない。また結核については、『結核予防法』に規定されているため、本表には含まれていない。しかし、一般論として重要とされる感染症は網羅されている考えられるので、参照されたい。

[615.28.INF:2004.1.12.古泉秀夫]


  1. 官報 号外第239号,15.10.16.
  2. 岡部信彦:感染症対策・予防接種の知識;調剤と情報,9(12):1679-1683(2003.11)
  3. 官報 号外第251号,15.10.30.
  4. 官報 第3716号,15.10.22.
  5. 基本医療六法編纂委員会・編:基本医療六法;中央法規,2002

介護福祉士の服薬介助の可否

木曜日, 8月 9th, 2007

KW:法律・規則・医師法・保助看法・介護福祉士・服薬介助・医療用医薬品

Q:介護福祉士が、服薬介助を行うことが出来るかどうか、服薬介助は医療行為に相当するのか。

A:医師法第22条(処方せんの交付義務)において『医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当たっている者に対して処方せんを交付しなければならない。

ただし、患者又は現にその看護に当たっている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。』と規定されている。

つまり医師の処方せんに基づいて出される『医療用医薬品』は、あくまで疾病治療の手段として患者に授与されるものであり、用法指示についても、医師自らが処方せんに記載することになっている。

その意味では、服薬介助も医療行為の一環であり、医師の指示に従って患者自身が自らの責任において服用する場合及びその保護者が介助する場合以外、服薬介助についても、一定の資格要件が伴うものと考えられる。

保助看法第37条(特定行為の制限)において『保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があった場合の外、診療機械を使用し、医薬品を授与し、又は医薬品ついて指示をなしその他医師若しくは歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずる虞のある行為をしてはならない。

ただし、臨時応急の手当てをなし、又は助産師がへそのおを切り、かん腸を施し、その他助産師の業務に当然附随する行為をなすことは差し支えない』とする規定が見られる。

つまり医療法上医療人として規定されている看護師等も、医師の指示があって初めて医薬品の取扱いがされるのであって、それ以外の場合には禁止されている。

一方、社会福祉士及び介護福祉士法第2条の2項において、『介護福祉士』とは、第42条第1項の登録をうけ、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいうと規定されており、これを見る限り『日常業務』の介護が主であり、治療の一端に含まれる服薬介助は、その業務に含まれていないと考える。従って、

  1. 患者の服用困難を理由とする錠剤の粉砕・脱カプセル化:患者から医師に報告し、医師が処方せん上に粉末化の指示を記載し、薬剤師が調剤時粉末化して調剤する。
  2. 食事摂取に拒絶反応のある者で、食事時間に合わせた服薬が困難な場合:患者自身が医師に相談し、食事摂取拒絶の原因を除外することが先決であり、その後医師が処方変更を含めて検討する。
  3. 摂食、嚥下障害のある場合の剤形の決定方法:処方せんを書く段階で医師が決定する問題であり、経口投与以外の投与方法を検討するか、散剤・水剤・シロップ剤等の剤形変更による対応を検討する。また散剤の場合、薬物の種類によっては、原末の使用により、1回服用量を少なくすることも可能である。
  4. 飲み残し、こぼしてしまった場合の処置:飲み残しの原因究明が先決である。理由が明確であれば医師に申し出て、処方上に反映してもらう。錠剤、カプセル剤であれば、こぼしたとしても拾えないわけではないから問題はないはずである。散剤、水剤、シロップ剤の場合、治療の目的、服用量とこぼした量のどちらが多いかで、対処方法は異なる。服用量が少なくこぼした量が多いのであれば、残薬から1回量分を服用する。服用量が多く、こぼした量が少ないのであれば、特に追加服用の必要はない。

等の対応が求められる。

医薬品は、その治療目的(経口糖尿病治療薬等)により、厳密に投与量を設定しなければならないものもある。

服用量についても定められた量を遵守する必要があるものもある。更に個々の薬物は、それぞれの性状に相違があるため、粉末化して服用することにより接触部位に組織障害を惹起する可能性があるもの、麻酔作用により噛み砕くことで持続する口内の痺れ等を発現するものがある。

従って、患者の状況に合わせて『医師が処方』し、薬剤師が医師の処方に基づき『調剤』することが基本であり、第三者がみだりに手を加えることがあってはならない。

[615.1.CAR:2004.2.2.古泉秀夫]


  1. 平成12年版介護保険六法;新日本法規,1990
  2. 基本医療六法平成14年版;中央法規,2002

漢方薬で鮫の骨が入っている製剤

木曜日, 8月 9th, 2007

?KW:漢方薬・サメ骨・鮫骨・漢方エキス製剤

Q:漢方薬で鮫の骨が入っている製剤。腹水の治療に使用するとのこと。

A:現在市販されている漢方エキス製剤として、鮫の骨が配合されている製剤は存在しない。また、漢方成分として鮫魚(こうぎょ)と称するものがドチザメ科のホシザメに相当するが、皮・鰭・胆・うきぶくろ等が薬用に使用されるとするだけで詳細な薬効は説明されていない。

但し、鮫骨に関する検索により、次の資料が入手できた。

カーティレイド[Cartilade](カーティレイドジャパン株式会社)

〒103 東京都中央区日本橋人形町1-1-22 恩田ビル 6階

TEL.03-3639-1966 FAX.03-3639-5286)

人とは対照的に鮫の癌罹患率は100万匹に1匹若しくはそれ以下ということから鮫の抗癌力についての検討が行われ、細菌・ウイルス・化学物質等に対し有効な抗体を作り出す特殊な免疫機能を持つということが解明された。更に巨大な肝臓が発癌物質の活性化を抑制することも判明したが、同時に鮫の全身が血管のない軟骨で形成されていることが重要な役割を果たしていることも解明された。

つまり軟骨に含まれている抗脈管形成成分が、癌の治療に大きな意味を持つと考えられた。1960年M.J.フォークマン博士(ハーバード大学)が、「自分を養ってくれる血管がなければ、腫瘍は増殖できない」という仮説を立て、細胞分裂のエネルギー源の補給路となる新生血管の形成をブロックすれば、癌の転移、増殖を抑制することが可能になる。そこで血管のない軟骨に視点が向けられ、動物の軟骨研究のパイオニアであるJ. プラッテン博士(ハーバード大学)は、牛の軟骨を用いて治療実験を行っていたが、鮫の軟骨が牛の軟骨との比較で脂肪分が少なく、血管形成を75%抑制する物質を1mg得るためには、牛軟骨は500g必要なところを、鮫軟骨では僅かに0.5gで済むことが判った。つまり鮫軟骨から抽出した抗脈管形成成分は、牛に比べて約1,000倍も効果があることが明らかになった。

鮫軟骨に抗脈管形成作用のある蛋白質が6-7種類あるとされていたが、1990年にその中の3種類が強力な抗脈管形成要素として特定された。これは細胞が作る最も大きなマクロプロテインと呼ばれ、ムコ多糖体と協力し治療上の効果を上げていることも判った。ムコ多糖体とは軟骨に含まれている複合炭水化物で、ムコ多糖体のコンドロイチン硫酸AやCには、炎症抑制効果があるために、様々な症状に有効である。

蛋白質の有効成分を損なわず、カーティレイドが精製されるまでには多大な研究と長い年月が費やされてきた。蛋白質は熱や化学物質に弱く、消化酵素によってアミノ酸に分解されると効果が失われてしまうため、カーティレイドは、200メッシュのスクリーンを90%以上通過する超微粒子に精製されている。

本品が奏効する癌として「乳癌、子宮癌、前立腺癌」に効果大、「固形癌」に対しとくに有効としている。

摂取方法:通常1回大匙で1杯(約6.6g)を目安に、1日3回水又はお湯で摂取する。

内容量500g中


水分 4.56%プロテイン 34.40%リン 56.05%

炭水化物 4.80%

ナトリウム 749mg/100g

カリウム 191mg/100g

カルシウム 18.94%

マグネシウム 322mg/100g

亜鉛 10.3mg/100g

亜燐酸 9.76%

脂肪分 0.19%

尚、本品は「健康食品」であり、医薬品としての取扱いはされていない。

[1998.9.4.古泉秀夫]


  1. 株式会社ツムラ学術課・私信,1994
  2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1985
  3. Cartilade Club研修用資料,1994.7.15.
  4. SDIC-DI・私信,1994
  5. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.1056(1995.5.26)