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ウコンとワーファリンの相互作用について

水曜日, 8月 8th, 2007

KW:相互作用・健康食品・代替医療・漢方薬・ウコン・鬱金・ワーファリン

Q:健康食品として市販されているウコンとワーファリンの相互作用について

A:健康食品として市販されているウコン(鬱金)は、ショウガ科の植物の根塊である。姜黄(キョウオウ・和名:ウコン)、鬱金(ウコン・和名:ハルウコン)及び莪朮(ガジュツ・和名:ガジュツ)。

  1. ウコン:学名Curcuma longa L. →姜黄。
  2. ハルウコン:学名Curcuma aromatica Salisb.
  3. ガジュツ:学名Curcuma zedoaria(Berg.)Rosc.

鬱金は熱帯アジア、インドを原産地とし、熱帯及び亜熱帯アジア諸国、台湾、ハイチ、ジャマイカ、ペルーを主産地とする多年生草木で、食品添加物としてウコン色素(クルクミン:curcumin)が用いられる。

また、本品はターメリック色素(turmeric oleoresin)とも呼称される。

  • [成分]
    鬱金(学名Curcuma longa L. →姜黄・Curcuma aromatica Salisb.→鬱金)の根茎には精油4.5%、6%が含まれる。精油中にはターメロン58%、ジンゲレン25%、フェランドレン1%、1,8-シネオール1%、サピーネン0.6%、ボルネオール0.5%、デヒドロターメロン等が含まれる。更にクルクミン0.3%・1.1%・4.8%及びアラビノース 1.1%、フルクトース12%、グルコース28%、脂肪油、澱粉、蓚酸塩等が含まれる。鬱金色素は鬱金の根茎から得られたcurcuminを主成分とするもので、食用油脂を含むことがある。本品は、黄?暗赤褐色の粉末、塊、ペースト又は液体で、特異な臭いがある。curcuminは、β-ジケトン類に属する黄色色素である。その他、鬱金の含有成分について、次の報告も見られる。

    精油を1.5?5.5%含有し、その構成成分はturmerone、(+)-ar-turmerone、zingiberene、(+)-α-phellandrene、cineol等である。黄色色素はcurcumin(0.3%)、p-coumaroyl feruoylmethane、di-p-coumaroylmethane等である。その他、脂肪油、澱粉などを含有する。

  • [薬理]1.利胆作用:姜黄の煎剤及び浸剤はイヌの胆汁分泌を増加させ、胆汁成分を正常に回復させる。更に胆嚢の収縮を増大し、その作用は弱いが持久的で、1?2時間持続する。curcuminとそのナトリウム塩には利胆作用があり、イヌに静脈注射すると、個体成分の含有量を減少させて、胆汁の分泌量を増加させる。しかし総合的な絶対値から見ると、コール酸塩・ビリルビン・コレステロールの分泌量はいずれも増加し、脂肪酸の成分は一定を保つ。もう一つの同属植物から抽出された精油は、胆汁分泌を増加させ、色素は胆嚢の収縮を惹起する。curcumenはコレステロールの溶剤となり、胆道結石の治療に用いることができる。50%の姜黄煎剤は、食欲を増進させる。その他、利胆作用についてcurcumine、turmerone、 cineol等の成分が肝細胞を刺激して分泌を増大、胆汁排泄も促進するので、利胆薬に分類される。大量では肝臓の脂肪変性を起こす。2 . 消化器作用:精油懸濁剤の経口投与により、口腔粘膜の刺激に伴う唾液分泌の亢進が見られる。胃内では、胃に温感を与え、胃運動を亢進、分泌を刺激する。これらの作用により食欲増進、健胃作用を示す。消化管運動は、始め緊張を増し、その後弛緩させる。

    3 .子宮に対する作用:片姜黄及び色姜黄の煎剤と浸剤(2%の塩酸を溶剤とする)は、マウス・モルモットの摘出子宮に対しては興奮作用があり、ウサギの子宮瘻管に対しては周期的収縮を起こし、1回の投与で5?7時間その作用が持続する。

    4.降圧作用:姜黄のアルコール抽出液は、麻酔下のイヌに対して降圧作用を示し、この作用はアトロピンの注射及び迷走神経切除によっても、影響を受けない。あらかじめ麦角エキスを注射しておくと、降圧作用を上昇作用へと逆転させることができ(コプチシンの逆転作用と相似したことがある)、エーテルによる抽出成分は、降圧作用は極めて弱い。

    5.心臓作用:麻酔ネコの心電図を指標とした実験で、心房、心室の収縮力を増大させる作用が認められたが、過剰量では抑制作用のみが発現した。心臓促進作用と同時に、呼吸興奮作用のあることも確認されている。

    6.抗菌作用:curcumin及び精油の成分は、黄色ブドウ球菌に対して比較的良好な抗菌作用がある。姜黄の水浸液はin vitroで多種の皮膚真菌に対して、それぞれ程度の異なる抑制作用を示す。煎剤はウイルスを接種したマウスに対し、生存期間を延長する。しかしウイルス性肝炎のうえに化学性(四塩化炭素)の肝障害が加わったものに対しては効果がない。この他姜黄の製剤はハエを殺すことができる。

    7.その他の作用:姜黄の煎剤は鎮痛作用があり、カエルの摘出心臓に対しては顕著な抑制を示す。
    適用として『芳香健胃薬として各種の処方に配合される。また利胆薬として肝炎、胆道煙、胆石症、カタル性黄疸に用いる。常用量は粉末として6?20g/日。』等の報告が見られる。

warfarin potassiumと飲食物の相互作用については、食品中に含まれるビタミンKの影響が報告されている。
しかし、公表されている鬱金の成分としてビタミンに関する報告はされていない。

この結果から鬱金中にビタミンの存在はないと判断するのかあるいは測定されていないだけなのかは不明であるが、鬱金はカレー粉、沢庵、漬物、ピクルス、フレンチマスタード、ピラフ、マーガリン、バター、チーズ、フルーツドリンク、リキュール酒に用いられ、また高価なサフランの代用としてブイヤベース、パエリア等のフランス料理、スペイン料理の着色料として用いられるとされている。
他、インドネシアでは、新郎・新婦が自分達の腕をウコンで黄色に染め、日本の赤飯の代わりにウコンで色付けした黄飯を食べるという伝統が残っている。インドでは女性の無駄毛を抑える目的で外用薬として塗布しているとする報告も見られる。

多くのアジア諸国では芳香性健胃薬や駆風剤(腸内ガス除去)、利胆薬として肝臓炎、胆石症、カタル性黄疸に用いられ、また治療中の潰瘍の内服薬や皮膚のはれ物、炎症を抑える軟膏として用いられている等の報告から考えるとwarfarin potassiumと鬱金の間に相互作用があるとすれば、既に何等かの報告がされているはずであるが、検索した結果、そのような報告が見られないことから鬱金とwarfarin potassiumとの間に相互作用はないものと判断される。

[015.2CUR:2000.6.19.古泉秀夫]


  1. 鈴木郁生・他監修:第7版 食品添加物公定書解説書;広川書店,1999
  2. 高木敬次郎・他編:和漢薬物学;南山堂,1983
  3. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1985
  4. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000